安倍晋三首相は5月1日から7日まで、欧州とロシアを歴訪する。26、27日に開かれる主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国として、サミットの主要テーマとなる世界経済への対応策などでG7首脳に協力を求める。ロシアではプーチン大統領と会談し、北方領土問題の進展をめざす。
4月14日に発生した熊本地震への対応で、当初より日程を短縮し、6泊で6カ国を訪れる強行日程となった。イタリア、フランス、ドイツ、英国のG7メンバーや、ベルギー、欧州連合(EU)の首脳らと会談する。伊勢志摩サミットの主要テーマで成果をあげるため、事前に腹合わせをしたい考えだ。
中国など新興国経済の減速を受け、サミットでは世界経済を下支えするための対応策が主要テーマになる。安倍首相は29日放送の日本テレビの番組で「(サミットで)『G7版3本の矢』が必要だというメッセージが出せればいい」と語った。今回の欧州歴訪でも、経済政策の協調を求める。
ただ、財政出動を含む対策を検討する日米両国に対し、欧州の経済大国ドイツは財政規律を重視し慎重姿勢だ。安倍首相は4日にドイツのメルケル首相と会談し、G7各国の協調に筋道をつけたい考えだ。
欧州では過激派組織「イスラム国」(IS)などによるテロが相次ぐ。サミットでは「G7テロ対策行動計画」の採択をめざしており、安倍首相はG7首脳との会談で、テロや難民対策も積極的に取り上げる意向。欧州の関心の高い問題と並行し、東シナ海や南シナ海へ進出する中国についても議題にして、日本の対中姿勢に支持を求める方針だ。
ロシアのプーチン大統領とは、一連の日程の最終盤となる6日にロシア南部ソチで会談する。安倍首相が2012年末に政権に復帰してから10回目の会談。プーチン氏との個人的な信頼関係をテコに、膠着(こうちゃく)する北方領土問題の進展に向けた糸口を探る。
首相は、鈴木宗男元衆院議員と28日に国会内で会談した際、プーチン氏との会談について「歴史をつくるべく頑張りたい」と意欲を見せたという。プーチン氏の訪日は、プーチン氏が首相だった09年を最後に実現しておらず、今回の会談で年内訪日にめどがつけられるかどうかも注目される。(小野甲太郎)