岸田文雄外相と中国の王毅(ワンイー)外相との会談が30日午前、北京の釣魚台国賓館で始まった。岸田氏は核・ミサイル開発を進める北朝鮮や、減速傾向にある世界経済への対応などでの協力を提案。南シナ海への進出を強める中国の動きについても、対話の必要性を訴える。午後には楊潔篪(ヤンチエチー)国務委員と会談し、李克強(リーコーチアン)首相を表敬訪問する予定だ。
日中外相会談は、ソウルで開かれた昨年11月以来。日本の外相が国際会議以外で中国を訪問するのは4年半ぶりで、2012年12月に安倍晋三首相が政権に復帰して以降初めてとなる。
会談の冒頭、王氏は「中日関係は近年絶えずぎくしゃくし、谷間に陥っているが、その原因は日本側が明白にわかっているはずだ」と牽制(けんせい)。さらに「いかに改善するか見解をうかがいたい。同時に日本側が本当に実行に移せるか見ていきたい」と強調した。岸田氏は「日中外相の往来が長きにわたり途絶えているのは望ましくない。頻繁に往来できる関係に戻していきたい」と述べた。
今年9月に杭州で主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる予定で、日本側は安倍首相と習近平(シーチンピン)国家主席による首脳会談の実現を目指す。
ただ、中国は関係改善に慎重な姿勢を崩していない。王氏は3月、全国人民代表大会(全人代)の記者会見で「日本の政府や指導者は関係を改善したいと言う一方で、様々な場面で中国に対し面倒を引き起こしている。裏表のある人間の典型的なやり方だ」と批判。今回の外相会談でも、偶発的な衝突回避のための防衛当局間の海空連絡メカニズム運用開始や、東シナ海ガス田開発に関する協議再開など、個別課題の具体的進展は「ない」(日本政府関係者)見通しだという。(北京=冨名腰隆)