英ブレア政権が2003年にイラク戦争に参戦した経緯や、侵攻後の占領政策を検証した独立調査委員会(チルコット委員会)が6日に報告書を公表したことを受け、英政界からは反応が相次いだ。
キャメロン首相は同日、下院で「報告書には学ぶべき教訓があった」とし、戦争は最後の手段とすることや、政府横断の連携の取れた意思決定を可能にする仕組みを作ることを挙げた。一方で、軍事介入を常に排除し、安全保障上の共通の国益が脅かされても米国と協力しないという方向に議論が向かうことには、懸念を示した。
反戦活動家として知られる野党・労働党のコービン党首は同日、ロンドンでの演説でイラク戦争で死亡した英兵の遺族やイラク市民らに向け、「わが党は開戦というひどい決断をした」と謝罪。労働党のブレア政権でイラク戦争に参戦したことを受けたものだ。そのうえで「開戦の決断は党と英国の汚点だが、今こそ、平和と国際司法にのっとった建設的な互恵関係を世界各国と築くチャンスだ」と決意を述べた。
03年に下院が賛成多数で可決した開戦の動議に反対した野党・自民党のファロン党首は「証拠や合法性に関係なく、ブッシュ元大統領と参戦すると決めてかかっていた」とブレア元首相を強く非難した。
ブレア氏は6日の記者会見で、イラク戦争で英兵やイラク市民に多大な犠牲が出たことに「深い悲しみ」を表し、開戦の大義とされた大量破壊兵器に関する情報が誤っていたことなど、政府の計画や過程に誤りがあったことに「遺憾の意と謝罪」を表明した。だが、イラクのフセイン独裁政権を排除するために開戦に踏み切った自身の判断そのものは「正しかった」と繰り返した。(ロンドン=渡辺志帆)
■「尊重はするが、同意しない」
イラク戦争をめぐる英独立調査委員会の報告書公表を受け、イラク戦争でブッシュ米政権を積極的に支えたオーストラリアのジョン・ハワード元首相(76)は7日、シドニーで記者会見し、チルコット氏の報告書と声明について「彼の見解は、後から起きた事象の情報に基づいたものだ。尊重はするが、同意しない」と述べた。
ハワード氏は会見で「後に違うと分かったが、イラクが大量破壊兵器を保有しているという英米の情報があり、豪州は両国と密接に情報を共有していた。我々はうそに基づいて参戦したとよく言われるが、情報に誤りはあったものの、うそはない」と主張。「(当時の)決定を擁護するし、取り下げない。謝罪するかと問うなら、私は間違った決断をしたとは思わない」と言い切った。
当時の保守連合政権を率いたハワード氏は、2001年9月の米同時多発テロの3日後、「豪・ニュージーランド・米国相互安全保障(ANZUS)条約」に基づき、集団的自衛権の発動を決定。イラク戦争には開戦当初から「有志連合」の一角として豪軍部隊を派遣し、日本の陸上自衛隊の警護任務にもあたった。(シドニー=郷富佐子)