フェンシングのリオ五輪代表の6人。(前列左から)佐藤希望、西岡詩穂、青木千佳(後列左から)見延和靖、太田雄貴、徳南堅太
父娘の間にはかつて「空白の2カ月」があった。
特集:リオオリンピック
「大げんかして、その間は一切、口をきかなかったんですよ」。フェンシング女子エペで2大会連続の五輪代表に決まった佐藤(旧姓・中野)希望(のぞみ、30)=大垣共立銀行=の父、中野芳樹さん(61)は、15年前の出来事を振り返る。
けんかの発端は、当時中学3年だった希望が突然、「フェンシングをやる」と言い出したことだった。
「私、猛反対でした」と父。無理もない。中野家は希望の祖父の代から剣道一家。福井県越前市(旧武生市)の道場で教えていた父の影響で、希望も二つ上の姉と一緒に小学生のころから剣道に打ち込んでいた。
「男子も勝てないぐらい強かった。私はほかの家の子にも、高校に行っても剣道を続けなさいよ、と言っていたので」と父は振り返る。希望の腕前は福井県下にとどろき、「剣道で全国総体に行こう」と、複数の高校から誘われていた。
ところが。希望に声をかけた指導者がもう1人いた。武生商高フェンシング部を全国総体で女子団体優勝に導いた諸江克昭さん(53)だ。「日本一になろう」。そして、「フェンシングなら五輪もあるぞ」。
すっかりその気になった娘を、…