英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けて、資産運用会社が英国の商業不動産に投資する不動産ファンドの解約を一時停止する動きが広がっている。6日には新たに3社が解約停止に踏み切り、英不動産市場への懸念が強まっている。
特集:イギリス、EU離脱へ
解約停止の背景には、一部企業が英国からの拠点移転を検討していることを受け、不動産価格の値下がりを見越した投資家による解約要求が相次いでいることがある。企業への融資は不動産を担保にしたものも多く、価格が大幅に下がれば銀行の経営不安を加速する恐れも指摘されている。
英資産運用会社ヘンダーソン・グローバル・インベスターズは6日、資産規模が約39億ポンド(約5千億円)のファンドの取引を一時停止したと発表。生命保険会社カナダ・ライフなども同じく一時停止した。保有する不動産の売却には一定の期間が必要で、その前に解約に応じれば資金が足りなくなる恐れがある。カナダ・ライフは停止期間が最大6カ月間に及ぶとした。
これまでに解約を停止したのは計6社で、英メディアによると資産規模は計約150億ポンド(1兆9500億円)。投資協会の統計によれば、英国の不動産ファンド市場は5月時点で約245億ポンドで約6割が停止の対象となった。(ロンドン=寺西和男)