マレーシアの政府系ファンド「1MDB」の資金が不正に流用され、ナジブ首相の義理の息子らが蓄財のために、米国などの不動産や美術品などの購入にあてていた疑いが浮上した。米司法省が20日、関連資産の差し押さえを求める訴訟を起こしたと発表した。
差し押さえの対象には、義理の息子が購入したロンドンやロサンゼルスの高級住宅、レオナルド・ディカプリオさん主演の米映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2014年)関連の興行収入などの権利が含まれている。
そのほか、義理の息子の知人らが購入したゴッホやモネなどの絵画、ホテル、小型ジェット機などもあり、総額は10億ドル(約1070億円)以上に上る。司法省によると、1MDBからは35億ドル余りが不正に流用されたとみられるが、リンチ長官は疑惑に関与した人物を今後訴追するかどうかの明言は避けた。
1MDBをめぐってはナジブ氏の資金流用疑惑も浮上。今回の疑惑にナジブ氏の名前は挙がっていないが、司法省が1MDBからの資金の受け取り手の一人と指摘した「マレーシア政府関係者」がナジブ氏だとする見方も出ている。
シンガポール当局も21日、1MDBに絡む不正と資金洗浄の疑いでナジブ氏の義理の息子に近い知人が所有する不動産などを差し押さえたと発表した。
一方、マレーシアの司法長官は21日、「どの国の法的執行機関の捜査でも、1MDBから資金が横領されたとする(はっきりした)証拠は見つかっていない」などとコメントした。(シンガポール=都留悦史)