試合終了後、スタンドにあいさつをする八王子の選手たち=阪神甲子園球場、越田省吾撮影
(11日、高校野球 日南学園7―1八王子)
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11日第1試合で、一塁側アルプス席に幅12メートルの横断幕が掲げられた。「必勝ありんこ軍団」。小さな力を結集して戦う、八王子(西東京)の愛称だ。1―7で日南学園(宮崎)に敗れたが、働きアリのような統率のとれた連係プレーをみせた。
愛称は前監督の池添法生さん(69)が命名した。1972年の就任当時、野球部は5人しかいなかった。体も小さく技術もない。どう戦うか悩んでいたころ、道端のアリがカブトムシのまわりに群がり、ひっくり返すのを目撃した。
「すごい結束力だ。個々で劣っていても、一斉攻撃で強豪チームを倒せる」
部訓に定め、練習グラウンドに「ありんこ軍団」の横断幕を掲げた。少しずつ力をつけ、98年と2007年に西東京大会で準優勝。今回三度目の正直で、春夏通じて初めての甲子園出場を果たした。
今のチームも結成当初は弱かった。昨秋の東京都大会では1次予選で敗退。守備は堅いが打てない。足の速い選手は少ないが、努力が結果に表れやすい走塁を極めることにした。
右投手、左投手それぞれの場合のリードのとり方、何死何塁の場面でどう走るべきか。細かな状況を設定して走り込んだ。西東京大会では6試合で23盗塁を決め、強豪校を次々破った。「ありんこは群れで生きる。仲間がいるから頑張れる」と安藤徳明監督。
甲子園の大舞台、日南学園戦では出塁が限られ、足を生かす機会がなかなかなかった。だが、九回に椎原崚君(3年)の好走塁から1点をもぎとった。守備でも無失策。最小で最強の働きアリ、身長158センチの遊撃手竹中裕貴君(3年)と、163センチの二塁手石塚冬汰君(3年)が計10の打球をさばき、併殺も決めた。
竹中君は試合後に言った。「ずば抜けた能力がなくても、力を合わせればここまで来られることを証明できた。大事なのは大きな敵に立ち向かう勇気を持てるかどうかです」(矢島大輔)