朝日新聞デジタルのアンケート
まだ食べられるものを捨てる時、ほとんどの人は罪悪感を覚え、もったいないと感じています。どんなときに食べられるものを捨てるかをアンケートで尋ねたところ、ちょうど半数の人が「捨てないようにしている」と回答しました。食べ物を捨てないためのみなさんの日々の取り組みと、専門家からのヒントを紹介します。
アンケート実施中「食品ロスを減らすには」
■冷蔵庫内を「見える化」 整理のプロ・大野多恵子さん
食品ロスの半分は家庭から出ているので、家庭でロスを減らすことはとても大切です。アンケートの回答を読むと、冷蔵庫の利用についての意見がいくつかありました。長持ちするよう保存して食べきるという工夫がある一方で、入れたまま時間が過ぎ食べられなくなる、という声もあるようです。
冷蔵庫の使い方次第で、食品ロスにつながります。たくさん買ってため込んでしまったり、料理を多く作り過ぎていつも大量におかずが入っていたり。奥に何が入っているか見えないこともあるのではないでしょうか。
冷蔵庫を一度、徹底的に片づけて、常にすべての食品が見えるようにすると、食費を減らすことができ、料理の時間短縮にもつながって、心地よくなります。その上、食品ロスも減ります。
冷蔵庫片づけのコツは、まず、中身をすべて出して、「食べられなくなったもの」「おいしく食べられるもの」「ぎりぎりのもの」に分けることです。食べられなくなったものは捨てる前に、なぜそのまま残っていたか原因を考えます。その他の食べ物は、定位置を決めて収納していきます。おかずは、中身がわかるよう透明な容器に入れると何が入っているのかすぐにわかります。冷蔵室の場合、空間を作るため、収納する食品はスペースの6、7割が理想です。野菜室、冷凍室では、重ねないで立てて入れるとすべて見えます。冷蔵庫が片づかなくなるのを防ぐには、「収納方法」「余分なものを買わない買い物」「余らせない料理」の三つがポイントです。
冷蔵室は「ホテル」と考えてください。調味料や生たまごなど、ある程度の期間保存するものを除き、一時的に置くけれどもすぐに食べる、という流れを作ってみてください。冷凍室は物によって長めに保存できますが、入れたままにしておくと、忘れて食べないこともあるので、冷凍保存を過信しない方がいいですね。
買い物では、あらかじめ買う予定の食品のメモを書きます。その際、すでに家にある野菜などの食材も書き添えてみてください。買い物をしながら、すでにある食材に何を加えてどのような料理を作るか、イメージできます。
常温の食品棚に置いている乾物や缶詰、レトルト食品も整理して収納します。棚の扉を開けると、何があるのかすべて見えます。災害時の保存食にもなりますが、日常的に使うようにして、災害用と日常用の境界をなるべく作らずに食べます。そうした流れをつくることも、食べ切ることにつながります。(聞き手・神田明美)
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おおの・たえこ 民間団体が資格を認定する、思考と空間の整理のプロ「ライフオーガナイザー」の講師資格を2012年に取得。冷蔵庫の片づけアドバイスや講演活動をする。著書に、冷蔵庫の片づけから食品ロスを減らすコツを紹介した「冷蔵庫さえ片づければ、なにもかもうまくいく」(竹書房)。写真は大野さん方の冷蔵庫。
■使い切り料理、サイトで紹介
南極料理人が残り物をハワイ料理に変え、料理研究家が野菜の葉や茎を使い切る工夫を紹介する。国の食品ロス施策を推進する消費者庁が、料理レシピ投稿サイト「クックパッド」に掲載したレシピです。
食材を無駄にしない「消費者庁のレシピ」を2014年11月から投稿、これまでに約230のレシピが54万アクセスを集めました。
担当者は「家庭の台所は、家庭からの食品ロスを減らす要です。余った食材や食べ残し料理を有効に活用するために、様々な調理のアイデアがあります」。レシピは、先進的に食品ロス問題に取り組む全国各地の自治体から集めました。
南極観測隊の料理人だった西村淳(じゅん)さんは、札幌市の依頼で刺し身をハワイ料理に変身させるアイデアを寄せました。
■刺し身→ハワイ料理
しょうゆ、ごま油、すり下ろしたタマネギを混ぜ合わせてタレをつくり、残り物の刺し身とあえます。それを冷蔵庫で30分寝かせるのがコツ。細かく砕いたピーナツを散らせばハワイ料理「ポキ」のできあがりです。
南極観測隊員の大好物だったというみそラーメンは、残った豚汁をアレンジしたもの。トウバンジャンやごま油を加えて手軽に変身させました。
使い切りレシピの中で反響があったのは「切り干しダイコンの煮物」。全国で初めて「朝ごはん条例」をつくった青森県鶴田町の食生活改善推進協議会からの提案です。余ってしまいがちな乾物を使い、戻し汁をそのままだし汁として使うアイデアも好評だったといいます。
これまで消費者庁のレシピにアイデアを寄せた先進自治体は仙台市や富山県、福井県、兵庫県など。担当者は「他にもレシピを考案している団体があれば連絡をください」。全国津々浦々の使い切りレシピを網羅したいと考えているそうです。(斎藤健一郎)
■アンケートに寄せられた工夫
アンケートに、食べ物を捨てないための工夫が寄せられています。
●「肉や魚は、余ったらみそに漬けるようにしている。2、3日後もおいしく食べられる。みそが勝手に“調理”してくれるので、焼くだけでごちそうになります」(東京都・50代男性)
●「人の記憶力には限界があると思うので、私は我が家にある食品は全て購入日と消費・賞味期限をリストアップしてます。そうすることで食べられなくなった!という事態が無くなりました。更に、今日はこれを食べた方がいいから、このメニューにしよう、と献立にも迷わなくなりました」(福岡県・30代女性)
●「買い物するときは、できるだけ期限の近いものから買うようにしている。使い切れる量を買い、賞味期限等が切れても即捨てたりせず自分の感覚を頼りに使い切る。作って下さる方々の労苦を思ったら簡単には捨てられない。食べたくても食べられない人も世界にはたくさんいるのだから、恵まれた環境にいる自分はもったいないという感覚を研ぎ澄まさなければ、と強く思う」(兵庫県・50代女性)
●「野菜を買ってきたら、長持ちするように工夫してから冷蔵庫に保存します。買ってきたまま冷蔵庫で保存するとすぐダメになってしまいます。大切なのは、水分と空気のバランスです。野菜だけではありませんが、水分が多すぎても、触れる空気が多すぎても野菜はすぐダメになってしまいます。根菜類・果菜類は全て個別にキッチンペーパーに包んでからラップをし、葉茎類は袋の下の根にキッチンペーパーを当て、上部を輪ゴムで閉めて空気が入らないようにします。これだけで、驚くほど野菜が長持ちします。(例えば、白菜は5カ月以上持ちます)食べ物を捨てたことはほとんどありませんが、上記のアンケートでは野菜としました」(東京都・30代女性)
●「冷蔵庫は1週間に1回なかをチェックして、その日は“残り物を食べる日”もしくは“残り物を使って料理する日”にしています。その他の食品はひと月に1回賞味期限をチェック。期限が近いもの、期限切れのものは棚の前のほうに出して、優先して使うようにしています。夫も食べ物を捨てることをとても嫌うので、協力してくれます。主婦/夫だけでなく家族全員が食べ物を捨てないように心掛けることが大事だと思います」(京都府・50代女性)
●「1週間分のメニューを決めて1週間分を水曜日にネットスーパーで買います。メニュー通りにやっていれば、火曜日には冷蔵庫がすっからかんになるので、賞味期限や使い残し、といった理由で捨てることはまずありません。ただ、息子の食欲が日によってバラつきがあるので、おかず等を残してしまい捨てることがあります。もったいないと思いつつ、息子の食欲まではコントロールできないし……と言い訳して罪悪感をぬぐっています。実家の母が趣味で野菜を大量に送ってくれ、前までは配っても配ってもなくならず困っていましたが、今は地域のこども食堂に寄付をしています。母にとって唯一の楽しみなので行き先が見つかりよかったと思っています」(神奈川県・40代女性)
●「こまめに冷凍する。賞味期限は参考程度。自分の鼻と舌で判断する。残ったものの再利用。例えば、おでんの汁を取って(凍らせて)おいて、筑前煮の時に使う。残ったらまた取っておいてきんぴらごぼうに使うなどすると、色んな食材のうまみも出て最後までおいしく使いきれる。おみそ汁もひき肉とタマネギ、ニンニク、しょうがを炒めたものに入れて、とろみをつけたり春雨を入れたりするとおいしく食べきれる。こういう知恵やアイデアを知ると、エコを意識せず、楽しく無駄を減らすことができると思う」(奈良県・40代女性)
●「買ってきた食品はレジのレシートを手に、PCの『メモ』に書き込みます。肉や魚(干物なども含む)は賞味期限の日付で分類し、野菜や果物等は購入日で分類し、調理した物(青菜のおひたし等)は調理日で分類します。食べ切った時はもちろんメモから削除します。このメモは、スーパーでの買い物時にはスマートフォンで確認しながら、新しい食材を購入します。私の居住する市では、生ゴミ(可燃ごみ)の回収は30リットルの袋を1単位として週2回の回収があります。家内をなくして一人暮らしの私の生活では1週間でも満杯になりませんが、衛生面を考えて週1ペースでゴミ出しします」(大阪府・60代男性)
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