国宝・二の丸御殿の大広間=京都市元離宮二条城事務所提供
「大政奉還」の舞台で会議ができます――。世界遺産・二条城(京都市中京区)の活用策を考える京都市の有識者会議が16日、国宝の二の丸御殿を含む施設の貸し出しや展示説明の充実策などを市に提案した。市は実現に向け、施設改修や利用のルール作りなど準備を進める方針だ。
市が管理する二条城は年間174万人の観光客が訪れ、清水寺や金閣寺と並ぶ人気の観光スポットだ。27万5千平方メートルの敷地に計7300平方メートルの建物群があり、市は2011~34年度の24年間で修理に約100億円をかける予定だ。一方、外国人客が増加するなか、展示の説明や外国語表記が不十分だとも指摘されていた。
市は2年前から、増収策の一環として庭や建物の一部を1日50万~100万円の利用料でイベントなどに貸し出しを始めた。だが、1867年に徳川慶喜が大政奉還を表明したことでも知られる二の丸御殿は対象外だった。
有識者会議の提案を受け、市は今後、御殿を国際会議などに貸し出すための対策を進める。天井画が傷まないようレプリカに取り換えるほか、貸し出し中の観覧者の受け入れ策などルールも整備。門川大作市長は「文化財は活用しなければ保護できない。必ず実現したい」と話す。
文化財修復を手がける小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソンさんら12人による有識者会議は、今年5月から城の活用策を議論。外国人向けのガイド付き観覧の導入や、1750年に焼失した天守閣の復元も提案に盛り込まれた。
アトキンソンさんは「二条城は京都の歴史を学ぶうえで大事な施設。全国に活用の手本を示してほしい」と語る。(波多野陽)