石段の中央が黒い「人影の石」。被爆71年を経て薄くなってきた=広島市中区の広島平和記念資料館、岡本玄撮影
広島で原子爆弾の閃光(せんこう)と熱線を浴び、その場に腰をかけていた人の姿が黒く残った「人影の石」。被爆の実態や爆心の位置を調べた研究者の娘が今年、体験を語り継ぐ「伝承者」の活動を始めた。投下から71年がたち、その影は薄らいできたが、父の思いや記憶を伝え続けると心に決めた。
特集:核といのちを考える
8月8日、広島平和記念資料館(原爆資料館)。元小学校教諭の甲斐晶子(かいあきこ)さん(60)=広島市東区=は約50人の来館者に静かに語りかけた。「私が幼いころ、父はよく、ある銀行の前に連れて行ってくれました」
爆心地の東260メートル、旧住友銀行広島支店。1945年8月6日朝、原爆の熱線のため、玄関の石段に座っていた人の影のような跡が残った。石は71年に保存のため切り取られ、原爆資料館に寄贈された。「この場所で何があったかを知り、平和な世界のためにどうしたらいいか。みなさんに考えていただきたい」
父は、広島大名誉教授の小島丈…