五稜郭タワーの展望台にはたくさんの観光客が訪れていた=22日、北海道函館市、山本裕之撮影
北海道新幹線が開業してから26日で半年。乗客数は当初の想定を上回り、沿線の観光地はにぎわいを見せる。政府の経済対策で新幹線の建設加速が打ち出され、「新幹線熱」は全国に広がる。ただ、少子高齢化で人口が減るなか、巨額の投資に見合う経済効果を得るのは簡単ではない。
特集:拓く 北海道新幹線
特集:テツの広場
■来場客「平均で2割増」
「いらっしゃい!」「お土産はどうですか?」
JR函館駅前の観光名所・函館朝市は、ホタテなど北海道の海産物が並び、シルバーウィークも観光客でにぎわった。東京都の山口徹さん(25)は1泊旅行で訪れた。「新幹線で来られるようになったので、乗って来てみたかった。食べ物が楽しみ」。函館朝市協同組合連合会の井上敏広理事長は、開業前は1日平均約5千人だった来場客が「平均で2割くらい増えている」と手応え十分だ。
北海道の玄関口・函館の観光地は新幹線開業に沸く。国の特別史跡・五稜郭を見下ろす「五稜郭タワー」の4~9月の客は前年より約4割増え、宿泊客の増加を見込んだ外資系ブランドホテルも初進出した。
沿線にも効果は及ぶ。「青森ねぶた祭」など東北6県の主要な夏祭りを訪れた客は、東日本大震災前の2010年以来、6年ぶりに1500万人を回復。JR東日本の旅行商品「びゅう」で青函地域を訪れた首都圏からの客は前年の2倍、東北6県からは1・5倍となった。JR東の担当者は「本州との行き来が活発になってきた」と語る。
東京―新函館北斗間は最短4時間2分で、鉄道が飛行機より優位とされる「4時間の壁」を破れていない。だが、平均乗車率は8月まで毎月、年間の平均乗車率の見込みの26%を上回っている。
北陸新幹線には利用客を奪われ減便した全日本空輸は、羽田―函館便では現状の便数のままにした。行きは新幹線、帰りは空路という観光客も多く、「相乗効果が出た」(全日空)。
一方、恩恵は函館にとどまる。函館大学の大橋美幸・准教授(社会学)が5~7月、新幹線などで函館市を訪れた道外からの客に行き先を尋ねると、約7割が「函館だけ」と答えた。
これまでに新幹線が開業した他の地域では、開業年の地元の観光客数は跳ね上がるが、2年目以降は鈍る傾向がある。2011年に九州新幹線が全線開通した鹿児島県では、開業翌年は延べ宿泊者数の伸びが鈍り、北陸新幹線が開業した石川県も今年1~6月は昨年ほどの勢いはない。
新函館北斗駅から先の札幌延伸…