極めて純度の高い金が使われていることがわかった金地螺鈿毛抜形太刀=26日午後、奈良市、伊藤進之介撮影
奈良・春日大社に伝わる国宝の金地螺鈿毛抜形太刀(きんじらでんけぬきがたたち、平安時代)の柄(つか)などの装飾金具の一部が、極めて純度の高い金でつくられていたことが分かった。春日大社が26日発表した。専門家によれば、この時代の工芸品は銅や銀などにめっきする場合が多く、純度の高い、多量の金が使われるのは異例。金の使用量の多さから、強大な権力者による奉納品との見方が強まった。
太刀は長さ96・3センチ。春日大社が現在進めている20年ごとに社殿を新しくする「第60次式年造替(しきねんぞうたい)」にあわせ、奈良文化財研究所に分析を依頼。X線CTスキャンなどの調査から、柄や鍔(つば)、鞘(さや)の金具の一部が純金(24金)に近い22~23金とみられることが判明した。
太刀は、柄や鍔などの金具に仏教の想像上の植物「宝相華(ほうそうげ)」などが彫金され、平安時代を代表する彫金工芸の傑作。鞘は、貝を埋める螺鈿の技法によって、竹林でスズメを追いかける猫の動きをアニメーションのように表現した。
これまでは銅か銀にめっきしたと考えられ、同時代の太刀と比べ輝きを失っていないことが謎だった。
関根俊一・奈良大教授(美術史)は「非常に高価な材料、高い技術で第一級の工人がつくったことがうかがえる。摂関家のだれかが奉納したと考えるのが妥当だろう」と話した。
春日大社は工芸家の協力で太刀を複製。式年造替後は複製品を本殿に納める。
10月1日に開館する春日大社国宝殿で展示する。10月31日まで。問い合わせは春日大社(0742・22・7788)へ。(栗田優美)