遠野市総合防災センターに到着した天皇、皇后両陛下=28日午後2時37分、岩手県遠野市青笹町糠前、迫和義撮影
天皇、皇后両陛下は28日、羽田発の特別機で岩手県に入り、東日本大震災後初めて大槌町を訪れた。19年前に泊まり、被災後に「三陸花ホテルはまぎく」として営業を再開したゆかりのホテルに宿泊した。
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ホテルの千代川茂社長(66)は「お待ちしておりました」と両陛下を出迎え、天皇陛下から「頑張りましたね」と声をかけられると、思わず涙ぐんだ。震災で行方不明の当時社長だった兄の山崎龍太郎さん(当時64)や、妹の緑さん(同53)の写真を持った親族に、皇后さまは「大変でしたね」とねぎらったという。
19年前、山崎さんは両陛下と砂浜を散策し、後に皇居にハマギクの種を贈っていた。その花が御所で咲いていることを知り、千代川さんは両陛下からの激励のメッセージと受け取り、営業再開にこぎつけた。陛下の言葉に「胸がいっぱいになった。頑張ったことが報われた。岩手を忘れないで被災地を訪れて下さることは地域の喜び」と話した。
両陛下が19年前に眺めた海岸のハマギクは半減し、砂浜も地盤沈下した。陛下は「(当時の)砂浜はないんですね」「東京はまだ咲いていない」と話し、侍従によると、両陛下は部屋で悲しそうな表情で外の様子を眺めていたという。
この日、両陛下は達増拓也知事らから復興状況の説明も受けた。天皇陛下は知事に「農業の被害はどうですか」「台風10号の被害はどうですか」などと質問していた。(多田晃子)