釜石地区合同庁舎に到着した天皇陛下=30日午前、岩手県釜石市新町、迫和義撮影
岩手県を訪問中の天皇、皇后両陛下は30日、大槌町から釜石市、遠野市、花巻市と移動した。その距離約117キロ。象徴天皇の務めとして、8月のお気持ち表明で語った「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切」の言葉通り、被災者に寄り添い続けた。
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釜石市の釜石地区合同庁舎に到着した両陛下は、庁舎前で出迎えた高齢の被災者らに歩み寄り、二手に分かれて声をかけ始めた。
市内の仮設住宅に暮らす長谷川静子さん(78)は、天皇陛下に「震災の時は本当にありがとうございました。またお会いできてうれしいです」と伝えると、「落ち着きましたか」と声をかけられた。「遠い所まで2度もいらして頂くのは本当に大変なこと。力になります。寄り添ってもらって幸せです」と涙ぐんだ。
皇后さまから「頑張って下さいね」と激励された山崎タイ子さん(75)は、「高齢で被災地訪問を続けるのは大変だろうが、私たちには勇気になる」と話した。
両陛下は予定時間を過ぎても声をかけ続け、遠野市や花巻市の立ち寄り先でも出迎えた人たちに何度も手を振って応えた。遠野市総合防災センターの前にいた奥寺栄一さん(66)は「被災地に、目も気持ちも向けてくれていることがまさに象徴としての姿」と話す。
宿泊先の花巻市のホテルでは、同市大迫町内川目地区に伝わる「早池峰神楽」を鑑賞した。天皇陛下は「大事に後世に伝えて下さい」と話したという。(多田晃子)