政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早大総長)が「家庭の役割」などをテーマに今月中にも議論を再開する。学校の負担を減らすために、家庭や地域に役割分担を求めるというが、提言の中身によっては、多様化する家庭のあり方に国が枠をはめることになりかねない。
「家庭や地域の教育力の低下が指摘され、教育現場は教師の長時間労働に支えられている」。松野博一文部科学相は7日の記者会見で、家庭の役割を議論する理由をこう語った。実行会議は、議論のテーマに「学校・家庭・地域の役割分担」を挙げたうえで、「家庭や地域が責任を果たすことは重要だ」と位置づける。実行会議がテーマとして、正面から「家庭教育」を打ち出すのは今回が初めてだ。
安倍政権はこれまでも繰り返し、教育の中の「家庭」に焦点を当ててきた。2006年の第1次政権で成立させた改正教育基本法では「保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」と明記。07年の教育再生会議第1次報告では「早寝・早起き・朝ごはん」などを提言し、第2次政権で始まった実行会議でも「家庭や地域などにおいても、大人が率先垂範して一人の人間としての在るべき姿を示し」(13年、第1次提言)などとした。
背景には安倍晋三首相の考えがある。野党時代の10年に出版された大学教授の対談集では、家族だけでなく社会全体で子育てにかかわる「子育ての社会化」について「『個人の家族からの解放』というイデオロギーを背景にした考え方」と批判。子育てや教育における家族、家庭の役割を重視する姿勢を鮮明にしている。ただ実行会議のメンバーの一人は、今の子育て世代に対して「国の将来を考えると、教育を任せていいのか」とみており、国が家庭教育に関与する必要性を指摘する。
一方、「家庭の役割」に焦点を…