がんや帯状疱疹(ほうしん)などによって起きる神経性の痛みの強さが時刻によって変動する仕組みを分子レベルで明らかにしたと、九州大の研究チームが発表した。痛みを悪化させる分子を標的にした新薬の開発につながる可能性があるという。14日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に論文が掲載された。
病気の症状と時刻が関係することは、ぜんそくの発作が夜に起こりやすい例などで知られる。九大の小柳悟教授(時間薬剤学)らは、神経性の痛みについても時刻によって悪化する仕組みがあると考え、神経を傷つけたマウスで痛みの症状が出る時のホルモンや酵素などの変化を正常なマウスと比べた。
その結果、傷つけたマウスでは、副腎皮質ホルモンの分泌が高まる時間帯に特定の酵素が増え、神経性の痛みを悪化させる脊髄(せきずい)中の細胞が活性化していることがわかった。この酵素の働きを阻害する物質をマウスの脊髄に注射すると、痛みの症状がなくなったという。
小柳教授は「神経性の痛みは根本的治療薬がない。ヒトでもこの酵素の働きを阻害できる物質を探し、創薬につなげたい」と話す。(小林舞子)