舞台でパタリロを演じる加藤諒
「パタリロ!」で知られるギャグ漫画家の魔夜峰央さん(63)が今年、絶好調だ。きっかけは30年以上前に描いた「翔(と)んで埼玉」の復刊。初の自叙伝も刊行し、12月にはパタリロのミュージカルも上演される。かつて一世を風靡(ふうび)しながら、ここ数年は苦境が続いたという魔夜さんが、どん底からの復活を語った。
「パタリロ!」は10歳の天才少年国王パタリロがハチャメチャな騒動を巻き起こすギャグ漫画。1978年に少女漫画誌「花とゆめ」で連載が始まると人気が沸騰し、82年にアニメ化された。その後も「パタリロ西遊記!」など派生作品も生まれ、本編は96巻まで発売され、少女ギャグ漫画では異例の長編となっている。
だが90年に「花とゆめ」での掲載が終わり、その後掲載誌を移るうち人気も下火に。パタリロ以外の仕事も減り、2010年ごろからは生活費にも困るようになった。宝石収集が趣味だったが、妻に贈った宝石類も食いつなぐために手放した。
「もう売る物もない。これからどうすればいいのか」。そんな時、30年以上前に描いた、埼玉県をとことんからかったギャグ漫画「翔んで埼玉」がネット上で話題に。テレビ番組でも紹介され、昨年末に宝島社から復刊されると55万部のヒットになった。「描いたことを全く覚えていなくて、不謹慎な内容なのに埼玉県知事にまでほめられた。昔の作品だから面白く受け止められたのでは」。テレビやラジオの出演依頼が急増し、過去の作品集も発売された。
「新しいものを得るには、得てきたものを捨てることも必要だったのかな」と魔夜さん。今年8月発売の初の自伝的エッセー「スピリチュアル漫画家!」(PHP)では、デビューからパタリロの誕生、近年の「どん底生活」もつづった。「人にできるのは素直に真っ当に生きることだけ。神様なのか守護霊なのかわからないが、何かに導かれて今の復活に至ったように感じています」
ミュージカルは12月8日から…