映画看板絵師の八条祥治さん=10月4日午後、大阪市西成区、伊藤進之介撮影
かつては、どの映画館にも手描きの看板がかかっていた。亡き父が36年前につくった工房の2代目絵師として、その技を守り続ける弟子が大阪にいる。手描き看板の劇場が次々に閉じていく中、「少しでも長く伝統の灯を守っていきたい」と、きょうも絵筆を握る。
大阪市西成区のアトリエ「八條(はちじょう)工房」。八条祥治(しょうじ)さん(59)は、ここで映画看板づくりに打ち込む。縦1メートル、横2・3メートルの紙を張ったベニヤ板に16色の水彩絵の具を使って描いていく。
印象は映画ポスターでつかむ。筆づかいは時に荒々しく、少し描いては後ろに下がって確かめ、また描く。徐々に整えていき、米国の俳優キアヌ・リーブスの思いつめたような表情が浮かび上がった。濃淡や陰影を強調する。「映画看板は、遠くからでも目を引くものでないとあきません」
1980年、看板制作会社の絵…