南米最高峰のアコンカグアに登頂した佐々木健太郎さん(右上)ら=2013年2月、DACグループ提供
広告会社のDACグループ(東京)が、エベレストを含む7大陸最高峰制覇を目指している。複数の社員が「リレー方式」で七つの頂を極める試みで、挑戦者の多くは登山の素人だ。25日、トレーニングを積んできた2人が、6座目の南極大陸のマウント・ビンソンに挑むために出発した。2018年春のエベレストで達成する計画だ。
DACグループは1962年創立。冒険家でもある石川和則代表(68)が12年、「冒険を通じて困難を乗り越えたことで得られる感動を、次世代の社員に伝えたい」と7大陸最高峰制覇を社員に発案。創立50周年記念事業に決まった。
同年8月、社員6人がアフリカ最高峰のキリマンジャロに登頂。13年2月には南米のアコンカグアに3人が登り、14年6月は石川代表が自ら北米最高峰デナリ(マッキンリー)を制覇。同年8月、欧州のエルブルースに3人が登頂。15年11月、豪州のコジオスコに10人が登った。これまで挑戦した社員延べ23人が全員登頂を果たしている。
今月下旬から南極の最高峰に挑むのは、経理部長代理の佐々木健太郎さん(45)と進行管理部主任の三島早貴(さき)さん(28)。2人とも元々は「ハイキング程度の登山歴」しかなかったが、昨秋から北アルプスや谷川岳などで冬山を含む登山技術を学び、気象条件の厳しい南極に備えてきた。
アコンカグアに続いて2座目の挑戦となる佐々木さんは「会社の壮大な事業に自分も参加したい」と遠征に応募。初挑戦となる三島さんは「高校時代はホッケー部で全国を目指していたが、社会人になって自分に自信をなくしていた。南極最高峰に登頂できれば、世界観が変わる気がする」と意欲を見せる。
2人の遠征は社の「業務」として扱われ、会社が費用の全額を負担する。
石川代表が本格的な冒険を始めたのは、史上初の南極大陸犬ぞり横断を果たした舟津圭三さん(60)との出会いがきっかけだった。01年、ロシアの砕氷船による北極点ツアーに参加した際、舟津さんがツアーガイドで同船していた。「世界的な冒険家なのに、舟津さんの謙虚で親しみやすい人柄に魅せられた」
すぐに意気投合し、11年4月に舟津さんのガイドで北極点まで約100キロをクロスカントリースキーで踏破。12年1月、南極点へスキーで約100キロ踏破したほか、14年6月に舟津さんとデナリに登頂した。石川代表は「冒険と経営は同じ面がある。入念な計画を立て、訓練を積んで結果を出す過程が大切」と話す。
DACグループは社員約650人。テレビCMや新聞広告を手がけるほか、訪日外国人向けに日本の魅力をウェブ発信するなど多方面で事業を展開している。
■ベテランガイドが安全確保
世界の高峰を巡る記録で人気を集めているのが7大陸最高峰制覇だ。全大陸制覇は「究極の記録」ととらえがちだが、近年は世界最高峰のエベレストでさえ山岳ガイドによる「ツアー登山」が盛んで、毎年数百人がエベレスト登頂を果たしている。「資金、時間、やる気、冬山経験」があれば一般登山者でも達成可能な記録といえる。
DACグループは、2013年…