京都大学野生動物研究センターの施設「熊本サンクチュアリ」(熊本県)に、ダウン症のチンパンジーがいることを、平田聡・京大教授(比較認知科学)らのグループが確認した。21日、専門誌プリマーテスに発表した。世界で2例目の報告例という。
確認されたのはメスのカナコ(24歳)。生まれつき心房を隔てる壁がない心臓病を患い、生後1年の検査で白内障と診断され、緑内障も発症して7歳までに視力を失った。5歳ごろに体重増加が緩やかになり、健康なチンパンジーよりも小柄に育った。いずれもヒトのダウン症にみられる症状という。
カナコの血液を採取して調べると22番染色体が1本多い3本ある「22トリソミー」と確認。ヒトでは21番目の染色体が3本ある「21トリソミー」(通称・ダウン症)にあたるという。
けんかに巻き込まれても逃げられないため、ほかのチンパンジーとは一緒に生活するのは難しい。ただ、生活の質に配慮して、別のメス1頭と毎月1回、一緒に過ごす時間を設けている。このメスは温和な性格で、カナコも一緒に過ごすのを楽しみにしている様子がうかがえるという。
平田教授は「ヒトに近いチンパンジーと、ダウン症の類似点や違いを比較できれば、ダウン症の理解がより深まると考えている」と話している。(西川迅)