高田商野球部の応援タオルを持つ三浦大輔さん=大阪市北区
■選抜高校野球
高田商(奈良)は23日、第2試合で秀岳館(熊本)戦に臨んだ。大舞台で躍動する選手をアルプススタンドから見守った桜井重宏校長(60)は、今月末に定年を迎える。35年の教諭人生の中には後の名選手と育んだ絆もある。
センバツに挑む高田商 OB・三浦大輔さんに聞く
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「僕が行きたくて行けなかった甲子園の舞台に君たちは立てる。とにかく甲子園を楽しんで欲しい」。今月13日、元DeNAの三浦大輔さん(43)が野球部をサプライズで訪ねた。プロ通算172勝で「ハマの番長」とファンに愛された三浦さんは野球部OBだ。
桜井さんは28年前、同校で担任を受け持った1年生のクラスで三浦さんと出会った。三浦さんは夏休み明けのある日、野球部の厳しい練習に耐えかねて失踪騒ぎを起こした。翌日昼、探し回って見つけてくれた桜井さんに「逃げても何も残らない」と語りかけられた。部の仲間は泣きながら辞めるなと止めてくれた。
これを機に、さぼりがちだった練習姿勢は一変。3年夏の奈良大会は準優勝。プロから声がかかった。三浦さんは「あの時のことがなければ今の僕はない」とふりかえる。
2人の関係を大久保拓海主将は「とてもまねできない強い絆を感じる」とうらやむが、現チームも昨秋の近畿大会1回戦では九回に4点差を追いつき、延長十三回にサヨナラ勝ち。その勢いで選抜をつかんだ。「つなぐことをみんなで意識していた。勝てたのは全員が信頼しあっていた証拠」(大久保主将)。
そんな思いで臨んだ甲子園。試合は昨年の春夏4強の強豪に1―11で敗れたが、桜井さんは「最後まであきらめないプレーをした経験は、これからも生きる上で支えになるはずです」と高田商がヒットを放つ度に立ちあがって声援。「1人では乗り越えられなくても、みんなの信頼を支えに成長していく姿は、昔の子も今の子も同じです」と語った。(石本登志男、市野塊)