李鍾元・早稲田大学大学院教授
■李鍾元・早稲田大学大学院教授(現代朝鮮半島研究)
北朝鮮が弾道ミサイル発射 文韓国大統領の就任後初
特集:緊迫、北朝鮮情勢
北朝鮮はなぜこのタイミングで弾道ミサイルを発射したのか。韓国で発足したばかりの文在寅(ムンジェイン)政権を圧迫しても得られるものはなく、北朝鮮への圧力で連携する中国と米国に対抗する姿勢を示したのだろう。特に、中国の言いなりにはならないという意思表示ではないか。中国が重視する「シルクロード経済圏構想」(一帯一路)の国際会議を狙ったかのようだ。
6回目の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射は米国との本格的な対決につながりかねず、強行しなかった。一方で、米中に抑え込まれたとの印象を避けるため、ICBMより射程の短いミサイルの発射に至ったのだろう。
自らの交渉力を高めるため、中距離ミサイルの実験は続ける構えだ。米国との交渉でミサイル実験の凍結で譲歩する事態も想定し、その前にやっておく意図もあるはずだ。
北朝鮮の思惑にかかわらず、南北対話を模索する文氏にとっては困難な状況になった。「北朝鮮寄り」という韓国内の保守派による批判や米国内にある警戒感をよそに、北朝鮮と対話するのは当面難しい。さらに軍事的な緊張が続けば、米中との協議を加速させる可能性がある。(聞き手・金順姫)