全体会合に臨む(左から)ドイツのメルケル首相、トランプ米大統領ら各国首脳。右端は麻生太郎副総理=8日午前、ドイツ・ハンブルク、代表撮影
ドイツ北部ハンブルクで開かれていた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は8日、首脳宣言を採択して閉幕した。米国以外の19カ国が結束して地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に取り組むことが明記され、米国の孤立が鮮明になった。貿易問題では、反保護主義の文言が明記されたが、昨年の首脳宣言と比較すると表現は弱められた。
鉄鋼めぐり米欧が応酬、貿易戦争に発展の恐れも G20
G20首脳会議、2019年は日本で開催
首脳宣言では、G20全体で温室効果ガスの削減などに取り組むことを明記。そのうえで、米国以外の参加国は「パリ協定の早急な完全実施に向けた強い決意を再確認する」とした。協定離脱を表明した米国については「化石燃料をよりクリーンで効率的に使えるよう、ほかの国と緊密に協力する」などと別途言及された。
米国のパリ協定離脱については、地球温暖化についての討議で各国から発言が集中した。だがトランプ米大統領は、ロシアのプーチン大統領との会談のため、この討議を途中で離席した。米国と他国の亀裂が浮き彫りになった。
議長国ドイツのメルケル首相は閉幕後の会見で「米国は自分が言いたいことを言い、我々は欧州の立場を明らかにした。米国の立場は我々の意見ではないことを明らかにできてよかった」と語った。
もう一つの焦点だった自由貿易については、「あらゆる不公正な貿易慣行を含む保護主義と闘い続ける」とした。また「相互に利益をもたらす貿易と投資の枠組みの重要性」や「正当な貿易を守るための手段の役割を認識する」との内容も入った。報復的な関税措置を検討する米国に配慮した形で、昨年の「あらゆる形態の保護主義に反対」という表現からは後退した。
中国などを念頭にした鉄鋼の過剰生産問題では、今年11月までに解決策を示す報告書をとりまとめることで合意した。
宣言には、欧州などに多くの難民・移民が流出しているアフリカへの支援や、密航業者の取り締まり強化なども盛り込まれた。
北朝鮮の核・ミサイル問題には触れなかった。
2019年のG20サミットは日本、20年はサウジアラビアで開催されることも宣言に含まれた。日本開催は初めて。18年はアルゼンチンでの開催が決まっている。(ハンブルク=栗林史子、寺西和男、高野弦)
■G20首脳宣言の骨子
【自由貿易】相互に利益をもたらす貿易と投資の枠組みの重要性を認識し、開かれた市場を維持する。あらゆる不公正な貿易慣行を含む保護主義と闘い続ける
【地球温暖化】米国以外の参加国は、パリ協定の早急な完全実施に向けた強い決意を再確認する。米国は化石燃料をよりクリーンで効率的に使えるよう、他の国と緊密に協力する