後部ドアの取っ手付近のボディーに入った切り込み。内蔵されているアラームに細工し、鳴らないようにしていたという(三重県警提供)
自動車盗の手口が巧妙化し続けている。高級車約400台を盗んだとして、三重県警が昨秋~今春に暴力団組員ら8人を逮捕した事件では、特殊な機器で防犯システムを無力化したり、事前にアラームを解除してから車内に侵入したりするなど、車のセキュリティーを知り尽くした手口が明らかになった。
県警はトヨタランドクルーザーやレクサスなど約400台を盗んだなどとして昨年9月~今年2月、男女8人を逮捕した。被害額は15億~20億円。グループの車から押収したのは「キープログラマー」と呼ばれる手のひらサイズの機器だ。
車にはエンジンやモーターを一元で管理するコンピューターが搭載されている。運転席付近には、コンピューターを外部と接続するコネクターがある。車のIDと鍵のIDが合致しないとエンジンがかからない「イモビライザー」と呼ばれる防犯システムもこのコンピューターで管理される。
県内の整備業者によると、キープログラマーは本来、車の整備や合鍵の作成に使う機器だ。コネクターにつないでトラブルの状況を確認したり、車と鍵のIDを書き換えたりする。ネットでも流通している。
グループは、キープログラマーをコネクターに接続し、ハッキングしてイモビライザーを解除。自分たちで準備した電子キーをキープログラマーにかざし、電波を読み込ませることで、IDの書き換えもしていたという。本来のキープログラマーをイモビライザーの解除に特化させた窃盗仕様のものが流通しているとみられ、グループの1人は「知り合いの暴力団組員から入手した」と話しているという。
自動車ジャーナリストの高山正…