インタビューに応じる申斉潤・元韓国金融委員長=6月26日、ソウル、武田肇撮影
韓国では「IMF(国際通貨基金)危機」と呼ばれるアジア通貨危機から20年。危機は、韓国に、そしてIMFや、その最大出資国の米国に何を残したのか。当時、韓国政府で対応にあたった元金融監督委員長の金容徳氏、米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)の国際金融局長として韓国に調査に赴いたエドウィン・トルーマン氏、2008年のリーマン・ショック後に再びおとずれた危機を経験した韓国政府の元金融委員長、申斉潤氏に聞いた。
IMFは「死に神」だったのか 格差広げた韓国通貨危機
■金容徳・元韓国金融監督委員長
――20年前のアジア通貨危機をどう振り返りますか。
「予想もしなかった金融危機だった。原因については今も専門家の意見が分かれている。アジア各国が抱えていた構造的な問題が噴出したという見方もあれば、欧米資本が突然この地域から引き揚げたことで、外貨の流動性危機に直面したという分析もある」
「韓国は『国家の不渡り』が目前という困難を経験したが、短期間で危機を乗り越えた」
――韓国では、通貨危機は「IMF危機」と呼ばれていますね。
「タイ・バーツの急落で通貨危機が始まった97年夏、韓国は自国に飛び火するとは考えていなかった。だが、数カ月後の11月は外貨準備が底をつきかけていた。IMFと時間をかけて交渉できず、プログラムを大部分、原案通り受け入れるしかなかった」
――大量の失業者が出るなど、国民生活に多大な犠牲が出ました。
「IMFは、韓国への融資条件として、殺人的といえる高金利や、ウォン高ドル安政策、強力な企業構造調整政策などを求めた。どれも厳しい内容だった。だが、結果として、金融機関の健全化や会計の透明化、財閥の改革など、当時韓国経済が抱えていた問題に一挙に取り組み、経済運営を先進化することができた。危機がなければ、もっと時間がかかった」
「ただ、今から思えば、韓国の危機の本質は短期的な外貨の流動性不足だった。にもかかわらず、IMFが迫った構造改革によって、一部の健全経営の企業まで倒産に追い込まれた。失業者も膨らんだ」
――現在に残る影響は。
「一連の改革のなかで、労働市場の柔軟化を推し進めたことで、終身雇用制の慣行が弱まった。非正規職で働く人が急増した。今日、深刻な問題になっている経済格差が発生した一つの原因と言える」
――再び韓国で危機が起こる可能性はありますか。
「韓国は、短期外債を大幅に減…