厚生労働省福岡労働局は20日、宅配便最大手のヤマト運輸(東京)が、博多北支店(福岡市)のセールスドライバー(SD)に違法な長時間労働をさせたなどとして、法人としての同社と、同支店の労務管理を担当していた幹部社員2人を労働基準法違反の疑いで福岡地検に書類送検した。
ヤマトが社内調査で残業代の未払いがあると認めた、1年余り前の違法残業について刑事責任が問われることになった。
福岡労働局の発表によると、同社は昨年6月16日から7月15日の間、博多北支店のSD1人に対し、労使協定で定めた1カ月あたりの残業時間の上限(95時間)を超える102時間の違法な残業をさせた疑いがある。この社員を含むSD2人の残業代計15万円分を所定の支給日に支払わなかった疑いも持たれている。
福岡県内では過去数年間に複数の支店が同様の違反で労働基準監督署から是正勧告を受けており、悪質性が高いと判断し、書類送検に踏み切ったとしている。昨年10月から博多北支店を捜査してトラックの運行記録装置などを調べた結果、SD2人について始業前と終業後に計約93時間のサービス残業が見つかったという。
同社の横浜市の支店で未払いの残業代があったとして労基署から是正勧告を受けた後、親会社のヤマトホールディングスは2月、全社的に過去2年分の勤務実態調査を開始。宅配現場で違法な長時間労働が常態化していたことが明らかになり、未払い残業代の総額は242億円にのぼった。
ヤマト運輸は「書類送検に至ったことを非常に重く受け止めている。再発防止や労働環境のさらなる改善に向け労使一体となって取り組んでいく」などとするコメントを出した。(贄川俊)