ヒマラヤ山脈の未踏峰「ラジョダダ」に向けて出発する萩原鼓十郎隊長(中央)と鈴木雄大副隊長(左)、福田倫史隊員
2020年に創部100周年を迎える早稲田大学山岳部がこの秋、ネパール中央部の北側、中国との国境にほど近いヒマラヤ山脈の未踏峰「ラジョダダ(6426メートル)」に挑戦する。21~24歳の同部OBと、現役部員の3人で編成された早大隊は20日、日本を出発した。少人数の、しかも若手だけで未踏峰に挑むことで、部員が減少する一方の大学山岳部の新たな可能性を切り開く。
「山の日」特集
ラジョダダは、ネパール政府が15年に登山を解禁した104座の一つ。解禁峰の多くは稜線(りょうせん)上のわずかな隆起などだったが、この山は二つの河川に挟まれた独立峰だ。3人の隊員は、公開された山の緯度と経度を地図上に丹念に落とし込んでいく過程で、前人未踏のラジョダダを特定した。
■隊長、三菱商事を辞めて挑む
解禁から間もない未踏峰だけに情報は少ない。山をはっきりととらえた写真もない。今回の挑戦のために勤めていた三菱商事を辞めた萩原鼓十郎隊長(24)は、「それでこそ挑む価値がある」と話す。
例えば、かつては珍しかった「7大陸最高峰登頂」は、登山ガイドたちが組織する「ツアー登山」の台頭などによって、いまや登山史的な意義も冒険的価値も失われた。世界最高峰エベレスト(8848メートル)ですらノーマルルートには安全確保のロープが張りめぐらされ、南極大陸最高峰のビンソン・マッシーフ(4892メートル)にも登頂ツアーが組まれている。
だが、萩原隊長らはそういった、もはや難易度が高くない、手軽な「勲章」に興味を示さない。「誰かのまねばかりしていても面白くない」と考えるからだ。
今は、エベレストに年間数百人が登頂する時代。そんな状況だからこそ、「誰も知らない。行ってみないと分からない。未知と戦うことが本当の登山であり、冒険なんだと思う」と語る。
早大隊は23日から7日間のキャラバンを経て、4560メートル付近にベースキャンプを設営する予定。氷河をさかのぼるように高度を上げ、上部にさらに二つの前進キャンプを設けたのちに、頂上にアタックする計画だ。10月19日前後の登頂を目指す。(吉永岳央)