国土交通省は、タクシーの運賃を乗車前に提示するサービスを来年度中に全国で解禁する方針を決めた。「いくらかかるか分からない」という不安をなくし、東京五輪・パラリンピックに向け、外国人観光客も安心して乗れるようにする。
運賃の仕組みは、道路運送法に基づく国交省の通達で決められている。これを改正し、現行では認められていない事前提示・確定を可能にする。
サービス利用には、スマートフォンでタクシーを予約する「配車アプリ」が必要。乗車予定地と目的地を入力すると、自動計算で運賃が画面に表示され、実際に利用するかどうかを決める。金額の確定後、予期せぬ渋滞に巻き込まれるなどしても運賃は変わらず、メーターを気にしなくてよくなる。
国交省は今年8~10月、東京で実証実験を行い、4千台超が参加した。関係者によると期間中には7879回の利用があり、アンケートでは67%が「本格導入されたら利用したい」と回答。理由は「渋滞などによる値上がりを気にしなくていい」「行ったことがない目的地でも事前に費用がわかる」の順に多かった。
タクシーを普段使わない人の利用も目立ったといい、国交省関係者は「利用のハードルを下げる効果が出た」とみる。一方、実験期間中の運賃収入合計はメーター運賃でも事前確定でもほぼ同じだった。
実験結果を踏まえ、国交省は来年度中に全国で実用化できるよう運賃ルールを改正する。ただ、サービスを受けられるのはアプリで配車を依頼する場合に限られ、路上で走っているタクシーを拾うケースは対象外となる方向だ。
タクシーは、免許を返納した高齢者の移動手段を確保する交通インフラとしても期待されるが、最近の10年で見ると利用者は3割減っている。今回の運賃ルール改正は、巻き返しを狙う業界側からの提案がきっかけになったという。(伊藤嘉孝)