丁寧に焼き上げるお好み焼きは絶品。さらにマスターの谷田幸正さん(右)と美鈴さんとのおしゃべりが美味しさを際立たせる=大阪府富田林市、滝沢美穂子撮影
「まだまだ勝手に関西遺産」
西日本の代表的な食といえば、お好み焼き。その「迷店」が大阪府富田林市にある。
「勝手に関西遺産」特集ページはこちら
「大門お好み焼道場」。壁一面にぎっしりと並ぶ木製のメニュー札。それも「メタボ焼」(1800円)や「演歌血液ガッタガタ」(1600円)など、味も形も想像できないものばかり。豚玉(1200円)よりも目立つ。マスターの谷田(たにだ)幸正さん(71)の迫力にも驚いた。思わず頭のなかに、名曲「河内のオッサンの唄」が流れてしまう……。
1970年のオープン時は、「いたって真面目なお好み焼き店」だった。メニューは豚玉や焼きそばなど一般的なものだけ。ただ、3年が経っても赤字続き。「やめたら格好つかんし。苦労したで」と谷田さん。
仕方なく従業員に店を離れてもらい、夫婦で営むことに。谷田さんは副業で生活費を稼いだ。奇天烈(きてれつ)なメニュー名を掲げ始めたのは「世間の注目を集めたい」という一心からだった。
メニュー名には、昭和の雰囲気が色濃く残る。ふんだんに野菜を使った「農協の花畑に春がきた」(1800円)は、農協の客が多かった時代に考えた。注文客に「遊びメニューやけど、かまへんか?」と、あえて念押しする「私濡れてます貴方(あなた)も元気焼」(2800円)は、スナックのホステスたちに爆発的に売れた。「河内では、アホンダラのようなメニューが『われ、これなんじゃい』と喜ばれたんやな」
メニューの数は、約450種。…