ニュージーランドで23日、総選挙(一院制、基本定数120)の投開票があり、ビル・イングリッシュ首相(55)が率いる与党国民党が第1党を維持した。若い新党首のもとで追い上げた最大野党の労働党をかわした。ただ、両党とも単独過半数には達しない見通しで、少数政党との連立協議に入る。
国民党は改選前の58議席を維持する見込み。労働党は同31議席より大きく増やすものの、及ばない見通しだ。連立協議では、過去に国民党、労働党のどちらとも協力したことのあるニュージーランドファースト党の対応が焦点となる。
選挙管理委員会によると、在外投票などを除く即日開票分の集計に基づく獲得予想議席は、国民党58、労働党45、ニュージーランドファースト党9、緑の党7、ACT党1。
2008年から3期続いた政権を担った国民党は、自由貿易を推進。中国向けの乳製品などの輸出が好調で、近年は2~3%の堅調な経済成長を達成してきたことを背景に、7月までは各社の世論調査で労働党に約20ポイントの差をつけていた。
劣勢の挽回(ばんかい)を狙って労働党は8月初め、副党首だったジャシンダ・アーダーン氏(37)を党首に選任。経済成長の一方で深刻化していた住宅問題の解消策などを訴えると、長期政権のマンネリ化に飽きた有権者の支持を集めてまき返した。
国民党は選挙戦終盤、労働党の政策に「財源不足だ」などと反撃。その結果、労働党が税改正を20年の総選挙以降に先送りすると公約を変える事態になった。有権者は結局、変化への期待よりも、実績をふまえた安定を選んだ形だ。
労働党は、住宅価格の高騰の一因が外国からの不動産投資にあるとして、中古住宅の外国人の投資を禁止する公約を掲げていた。これは、外国からの投資を差別しない環太平洋経済連携協定(TPP)の条項に反する。そのため、政権交代となれば、米国離脱後に日本やニュージーランドなど11カ国で進める協定の再交渉の行方に影響するとの懸念が出ていた。(オークランド=小暮哲夫)