米ニューヨーク・マンハッタンで31日に起きた事件で、容疑者が使ったとみられるトラック=ロイター
米ニューヨーク・マンハッタンで10月31日午後(日本時間11月1日未明)、ピックアップトラック1台が自転車専用の道路に突入し、暴走した。自転車の利用者や歩行者を次々にはね、8人が死亡、10人以上が負傷した。運転していた男(29)は警官に撃たれた後に拘束された。連邦捜査局(FBI)などがテロ事件とみて、動機などを調べている。
在ニューヨーク日本総領事館によると、31日夜時点で日本人が巻き込まれたという情報はない。米メディアによると、犠牲者8人のうち5人は、高校卒業30年を記念して観光に来ていたアルゼンチン人。ベルギー人も1人含まれているという。
ニューヨーク市のデブラシオ市長は緊急会見で「罪なき市民を狙った卑劣なテロ行為」と非難した。ただ、組織的犯行であることを示す証拠はないという。
米ニューヨーク・タイムズ紙によると、男はウズベキスタン出身のサイフロ・サイポフ容疑者。2010年に米国に入国し、グリーンカード(永住権)の所持者だという。トラックの近くではアラビア語の手書きのメモが見つかった。過激派組織「イスラム国」(IS)への忠誠を示す内容だという。トラックは、隣接するニュージャージー州内のホームセンターで借りたものだったという。
事件は午後3時過ぎに発生。男はトラックで歩行者らをはねた後、スクールバスに衝突して停止した。その後、男はトラックを降りて銃のようなものを手に交差点の中央を走り回った。
米メディアによると、男はアラビア語で「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んだという目撃情報もある。手にしていたのは、命中した場所に着色するペイント銃などだったと後で判明した。
現場は、マンハッタン南西部の商業施設や高層ビルが立ち並ぶエリア。近くには、2001年9月に米同時多発テロで崩壊した世界貿易センタービルの跡地や、金融街のウォール街がある。マンハッタンでは同日夜、目抜き通りで恒例のハロウィーンパレードが予定されており、警備を強化したうえで実施された。
トランプ大統領は事件発生後、「非常に病んだ、頭のおかしな人物による犯行のようだ」とツイッターに投稿。次のツイートでISに言及し、「米国に戻ったり入ったりするのを許してはならない。もうたくさんだ!」と発信。その次に「犠牲者と遺族に哀悼の意を表する」と表明した。
乗用車を使い、多くの人でにぎわう場所に突っ込む形態のテロは昨夏以降、欧州などで多発している。(ニューヨーク=金成隆一、鵜飼啓)