1月に沖縄の米軍基地反対運動を特集した東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)の番組「ニュース女子」が、「事実の裏付けが不十分だ」「一方的な立場で伝えた」などと批判されている問題で、MXは30日夜、報道特別番組「沖縄からのメッセージ 基地・ウチナンチュの想(おも)い」を放送した。同局の番組審議会が、多角的な視点から再取材をした番組を制作するよう求めていた。
MXテレビに「沖縄ヘイト」批判 米軍への抗議活動巡り
1時間15分の番組では、琉球王国以来の歴史をふまえ、沖縄戦で「本土の捨て石」(番組)とされ、多くの犠牲者が出たことや、戦後も基地に起因する事件や事故が続いていることなどを説明。基地に反対する人や、反対運動をさまざまな思いで見つめる人など、立場の異なる人たちの思いを伝えた。「ニュース女子」での放送内容に直接、言及することはなく、1月に伝えた内容を改めて肯定したり、否定したりする場面はなかった。
だが、批判を受けた部分を意識して制作したと思わせる場面が一部にあった。
1月の放送では「反対運動の参加者に日当が出ている」と伝え、事実と異なると批判が出た。今回の番組では、反対運動に参加する男性が取材に対し「金もらってやってるとかいう話が出るが、年配者が多く、昼飯を抜いたりしてみんなやっている」などと語った。
また1月には、抗議活動のために救急車の通行が妨げられた、と住民の証言を基に伝えていた。地元の消防署長は今回の番組の取材に対し、「20件の通報があり、6件が搬送された。抗議活動で道が狭いので、徐行しないといけないところがある。(搬送者を)収容したあと、確認の意味で救急車に誰が乗っているのか、(救急車を)とめて尋ねてきた人はいた」と語った。
県外の人が反対運動に加わっていることについて、当事者の発言なしで否定的に伝えていたが、今回は「沖縄を犠牲にして日本の繁栄があった。沖縄の人以上に、県外の人間は反対運動をしていくべきだと思う」という県外からの参加者の声を紹介した。
「ニュース女子」は制作会社「DHCシアター」が作っているが、今回はMXテレビが自ら取材、制作した。同局は2月末、ニュース女子について「違法行為を行う過激な活動家に焦点を当てるがあまり、適法に活動されている方々に関して誤解を生じさせる余地のある表現があったことは否めず、当社として遺憾」とする一方、「事実関係において捏造(ねつぞう)、虚偽があったとは認められず、放送法及び放送基準に沿った制作内容であったと判断している」との見解を公表している。
一方、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は「事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が十分に機能していたのかなどを検証する必要がある」として現在、審議している。