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(中西哲生コラム)世界に離される日本、Jの指導者カギ

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スポーツジャーナリストの中西哲生さん


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1993年5月のJリーグ開幕から、今年で25年が経ちます。百年構想で始まりましたが、今年の5月でちょうどその4分の1が過ぎることになります。10チームで始まり、今はJ3まで54クラブ。チーム数が増えたから成功というわけではありませんが、Jリーグとして着実に歩みを進めてきた25年でした。


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この間、W杯は98年フランス大会を皮切りに、6大会連続の出場。Jリーグを経て海外クラブでプレーする選手が増えました。そして、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)は3度の優勝。クラブW杯でも、開催国枠の出場でしたが、2016年に鹿島が決勝に進出し、レアル・マドリードを相手に善戦しました。クラブレベルの観点からみれば、Jリーグが始まる以前の日本リーグ時代と比べ、世界との差は縮まり、一定の成果をあげたことはまぎれもない事実です。


ただ、代表チームに関しては14年のW杯ブラジル大会以降の3年半で、世界との差が大幅に広がった感は否めません。アギーレ監督が6カ月で退任。ハリルホジッチ監督に交代という事情を差し引いても、明らかに代表レベルでは世界のサッカーの進化についていけていない状況です。


世界に追いつけない理由


その大きな理由の一つは、かつてはバルセロナやバイエルン・ミュンヘン、今はマンチェスター・シティーを率いるグアルディオラ監督の存在です。彼によって選手個々の役割がより「言語化」され、そのポジションにおいて何をすべきかというポジショナルプレーの概念が高まり、世界トップの選手たちの役割がより整理されたのです。


「言語化」というのは、監督が自分のやりたいサッカーを具現化すべく、ピッチを分割し、このゾーンでは各選手が何をすべきか、そのゾーンにいつ入るのか、ということを具体的に提示することがその一例です。そして、この選手がここに動いたら、別の選手はここに動く、といったチームとしての連動性をつくりあげることで、攻撃においての崩しの方程式が、よりオートマチックになります。


この概念は、個々のクリエーティビティー(創造力)を奪うものではなく、むしろ生かすものでもあります。その選手のクリエーティビティーを、より効果的に発揮させるための配置、タイミングの徹底ともいえるのです。また、それはボールを奪われた瞬間に守備に行くための、最適な配置にもなっています。そして、それを試合で実現させるためには、そのための特殊なトレーニングが必要です。あうんの呼吸を試合の中で何度も再現させるための練習体系、さらに言葉を持つことが必要となります。


ただ今の日本代表で、それを求めるのは非常に難しいことです。なぜなら、そうした高度なレベルで言語化できる監督が、そもそも世界にそんなに多くは存在していないからです。それぐらいの能力を持っている監督を招こうとすれば、莫大(ばくだい)な資金がかかりますし、そういった監督が代表チームを率いることも、まれだからです。


日本に起きている変化


その一方で、一個人として、世界的な進化の傾向を察知しながら、ポジショナルプレーという世界トップクラスの概念を取り入れられそうな指導者も、日本にも少しずつではありますが出てきています。そこでポイントになるのは、代表クラスで世界と生じつつある差を、Jリーグが埋められるような方法を考えていくことです。トップチームから下部組織を含めたすべての指導者がさらに進化しなければなりませんし、世界の日々の進化を繊細に感じながら、さらにそれ以上の日本ヂカラを上積みできる人材が出てこないと、日本サッカーのW杯優勝が永久に不可能だと感じるくらい、この3年で世界トップクラスとの差が開いてしまっています。


進化に疑いの余地はないが…


25年間でJリーグが進化してきたことには疑いの余地はありません。しかし、代表チームのレベルアップにつなげる観点からいうと、ただでさえ、W杯が26年大会から48チーム出場に増える中、「ただ出場するだけのもの」になるのか、「優勝を目指せるもの」になるのかという、大きな分岐点に今、立たされているのです。Jリーグの各クラブが革新的な若い指導者を生み出せる力を持ち、そういう指導者を登用できなければ、25年間で積み上げてきたものを瓦解(がかい)させてしまう可能性すらある状況です。逆に言えば、それぐらいのスピードで世界のサッカーは進化しているのです。


日本代表の進化のために必要なこと


今までは選手個人が海外で、世界トップクラスの選手たちと渡り合いながら、日本代表の進化を加速させてきました。もちろん今後もそれは必要ですし、日本代表のほとんどの選手がブラジル代表のように、ポジショナルプレーの概念を持ち、その質を所属しているチームで上げられることが理想です。しかし、世界トップクラスのチームに日本人選手が所属することが非常に難しいだけに、日本代表の進化のカギは、Jリーグにあるのです。


これからの25年間は、新しいタイプの指導者を生み出す新しい思考と勇気を、Jリーグ各クラブに期待したいところです。



なかにし・てつお 1969年生まれ、名古屋市出身。同志社大から92年、Jリーグ名古屋に入団。97年に当時JFLの川崎へ移籍、主将として99年のJ1昇格の原動力に。2000年に引退後、スポーツジャーナリストとして活躍。07年から15年まで日本サッカー協会特任理事を務め、現在は日本サッカー協会参与。このコラムでは、サッカーを中心とする様々なスポーツを取り上げ、「日本の力」を探っていきます。



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