「みちのきち 私の一冊」から
若者よ、少しでもいいから本を読もう――。大学生の本離れを食い止めようと、幅広い分野の著名人109人が1冊ずつを紹介する本を、国学院大(東京都渋谷区)がつくった。若手職員たちが自ら依頼し、引き受けた著名人らはみんな無償で文章を寄せた。
この本は「みちのきち 私の一冊」(弘文堂)。吉野源三郎著の「君たちはどう生きるか」を紹介するジャーナリストの池上彰さんから始まり、作家の池井戸潤さん、落語家の三遊亭歌る多さん、と続く。自身の「座右の本」と本への思いがつづられ、顔ぶれは、横綱の白鵬翔さんから、ボクシング元世界王者の長谷川穂積さん、俳優の戸田恵梨香さん、デザイナーの森英恵さん、さらには3メガバンクの頭取、元大臣、現職知事までと幅広い。
本づくりの中心となったのは、国学院大の20~30代の職員だ。経理や人事など課をまたいで集まった11人が「それぞれの会いたい人を中心に直撃で声をかけた」。電話やメールで300人余に依頼し、109人が無償で寄稿してくれた。紹介される本の種類も小説やエッセーなど様々だ。
企画の背景には、若者の本離れへの危機感がある。全国大学生協連合会の調査で、読書時間「ゼロ」の学生が初めて5割を超えた。国学院大の2年前の調査でも同大生が1年間に読む本は平均7冊にとどまった。
だから、本は「読みやすさ」にこだわった。見開きの左ページを丸々使って本の写真、右ページに紹介文を載せた。文章は120~1300字ほど。文字数の少ない人から並べ、最初は大きな文字で、後ろに進むほど文字が小さくなる。気づけば多くの文字を読んでいる仕掛けだ。
企画責任者の石井研士副学長(63)は「私たちの世代にとって読書は『日常』だったが、時代は変わった。どれか一冊でも読んでみて、人生の糧にしてくれることを願います」。同大生らに無料で配るほか、4月25日から一般書店でも販売する。(土居新平)