子どもの写真をSNSにアップする時の注意点
入園式や入学式で子どもの晴れ姿をパチリ。その後、すぐにSNSへアップしそうになったことはありませんか? 実はこうした写真が悪用されるおそれがあるのです。子どもの写真を扱う時の注意点を専門家に聞きました。
ITジャーナリストの高橋暁子さんは、親がSNSに写真をあげたくなる心理について、「子育ての悩みを抱えた時、我が子の画像をアップして、周囲から『大きくなったね』などと成長を喜ぶ言葉をかけてもらうと励みになるのです」と話す。
だが、危機管理は必要だ。
「園で撮影したどんな写真もSNSへの投稿は禁止です」。4月初旬、都内のある保育園で行われた入園式で、園長が保護者に呼びかけた。数年前、系列の園で「行事のとき、うちの子が写っている写真をママ友が無断でSNSにあげた」という苦情が寄せられ、このルールを作ったという。
高橋さんは、写真のアップ時の注意を呼びかける。
まず、SNS上に投稿した写真や動画を見られる人を、親族や友人など信頼できる人に限ることだ。名前や住所など、個人情報の特定につながる写真の投稿も避けたい。我が子以外の子どもが写り込んでいる時も要注意だ。どうしてもアップしたいなら、必ず保護者に確認を。高橋さんは「その場では断りづらい人もいるので、危機管理したいならアップしないのが一番です」と話す。
インスタグラムなどで、関連した投稿を一覧でひもづけるための「#(ハッシュタグ)」機能にも注意が必要だ。「#」をつけると、キーワードを入力するだけで、多くの投稿を見つけることができる。「見られていないと思っても、意外と多くの人の目に触れている」という。
悪意の加工も
深刻な被害にあうことも。
1年ほど前、ある幼稚園が保護者への報告のため、お泊まり保育でお風呂に入ったり、プールで遊んだりする園児の写真をブログに載せた。だが、児童ポルノサイトへの接続を強制的に遮断する「インターネットコンテンツセーフティ協会」(事務局・ヤフー)の桃沢隼人さん(38)は、この写真が児童性愛者を名乗る人たちのサイトに掲載されているのを見つけた。性的な部分を強調する加工が施され、転載が繰り返されていたという。
桃沢さんは「悪意を持って加工されるのは防ぎようがない」とし、「子どもの写真は安易にアップしないのが大原則だ」と強調する。少しでも下着が見えたり、着替えたりしている写真は、性的な文脈でとらえられかねないので控えた方がよい。「一度アップされたものは海外サーバーなどを経由してあちこちに転載され、消しきれないのが現状です」
すでにアップしてしまった画像を、ネット上から消すにはどうすればいいのか。掲載や転載先のプロバイダーに、専用フォームや書面で削除を求める方法があるが、転載したのが海外のプロバイダーだと、放置されたりすることも多い。
その場合、グーグルなどの検索サイトの専用フォームから削除を要請できる。検索エンジンに結果が表示されなくなることもある。また、IT企業でつくる団体がウェブ上に設けている違法・有害情報の通報窓口「セーフライン」
https://www.safe-line.jp
から、該当のURLを送って相談したり、外国語で削除申請をしてもらったりすることもできる。(中井なつみ、田渕紫織)
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ネット上の法律問題に詳しい戸田総合法律事務所の船越雄一弁護士の話 肖像権は、何歳であろうと、あくまで子ども個人に属する。懸念なく子どもの写真を共有できる世の中が理想だが、ネット上では目に見えない人が相手なので、性善説でいない方がいい。日常会話のような感覚で撮って、すぐにSNSにあげてしまう時代だが、せめてひと呼吸置き、責任を持ってアップすることを勧めたい。