年齢査定法の研究が進むオオサンショウウオ=山崎大海さん提供
国の特別天然記念物・オオサンショウウオの年齢が知りたい――。山口市在住の県職員山崎大海さん(30)らの研究チームが、広島市の安佐動物公園で保管されている標本を調べたところ、死んだ時の年齢と指の骨の年輪「成長停止線」の数が、ほぼ一致することが分かった。広島大学総合博物館の論文集に掲載された。
オオサンショウウオの年齢査定法は研究が進んでおらず、何歳で大人になり、何歳まで生きるのかがはっきりしていない。ただ、オオサンショウウオを含む両生類の多くは、えさが少なくなる冬場に成長が鈍ることで指の骨の断面に年輪のような成長停止線ができる。さらに、この線の数がほぼ年齢と一致することが分かっている。
そこで山崎さんや安佐動物公園の研究者ら計5人は、オオサンショウウオの成長停止線について調べた。同園で生まれて死ぬまで、自然に近い環境で飼育されていたオオサンショウウオ(死亡時の年齢1~11歳)の標本6匹の指の一部を切って確かめた。
その結果、後ろ足の指の骨の断面に年輪のような成長停止線があり、その数が年齢とほぼ一致していたことを突き止めた。秋に生まれるオオサンショウウオは、2度目の冬から毎冬、成長停止線ができるのではと考えられるという。
この成果をまとめた英語の論文は、広島大総合博物館のHPで閲覧することができる。山崎さんは「自然界のオオサンショウウオでもこの方法を適用できるかについては、さらに研究が必要だ」と話し、「各個体の年齢を知ることで、保護の在り方の検討にもつながる」と研究の意義を強調した。
オオサンショウウオの生態に詳しいNPO法人「日本ハンザキ研究所」の岡田純理事長は「年齢査定の研究が論文にまとめられたのは初めてではないか」と話す。「サンプル数は少ないが意義は深い。今後は高齢の個体でもこの考え方が当てはまるかなどについて、研究が必要になる」と評価している。
山崎さんは広島大の大学院で生物圏科学研究科を修了した。院生時代の2011年からオオサンショウウオの研究に取り組んでいる。(林国広)
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〈オオサンショウウオ〉 大きいものでは全長150センチ、体重45キロにもなる世界最大の両生類。寿命は60年以上とされる。川で暮らし、秋に孵化(ふか)する。魚やカエルなどを食べる。中国などに近縁種はいるが、世界の中で西日本にしかいない。県内では岩国市周辺で確認されているという。1952年に国の特別天然記念物に指定された。