米山隆一・新潟県知事の辞職表明を受け、与野党は18日、後任を選ぶ知事選に向けて動き始めた。前回知事選で敗北した与党側は「取り返しに行く」と語り、野党側は統一候補の選定を模索する。与野党激突の構図となれば、原発再稼働の是非のほか、安倍政権の評価も問われる選挙戦となりそうだ。
新潟県選挙管理委員会によると、辞職に伴って行われる知事選は6月上旬ごろになる見通しだ。
この知事選について、複数の与党幹部は18日、「国政選挙並みの戦いになる」と口をそろえた。2016年の前回知事選の雪辱を期すという意味合いだけでなく、森友学園をめぐる財務省の決裁文書改ざんや「首相案件」との文書が見つかった加計学園の獣医学部新設問題など相次ぐ不祥事に対し、与党推薦候補が知事選に勝利することで政権への逆風を跳ね返す契機になり得ると期待する。
ただ、敗北すれば政権運営を直撃するリスクともなりかねず、安倍晋三首相に近い議員からは「時期が悪い」との声も漏れる。さらに、前回選で米山氏は、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に慎重姿勢を示して支持を広げた経緯があり、与党側は原発再稼働の争点化を避けたいのが本音だ。自民党内からは「今回の知事選は県政の刷新が争点だ」と予防線を張る声が上がる。
候補者擁立をめぐっては、与党内でさっそく現役官僚や元国会議員らの名前が挙がっている。ただ、昨年秋の衆院選候補者選びで自民党本部と新潟県連が対立し、しこりも残っており、候補者の選定に手間取る可能性もある。
一方、野党側も「野党共闘の先進地」と位置づけてきた新潟での知事選だけに、力を入れる。
自由党新潟県連代表を務める森ゆうこ参院議員は18日、朝日新聞の取材に「(前回知事選は)原発再稼働が争点で県民の意思が明確に示された」と振り返り、「(米山知事の辞職表明で)がっくりしてまだ前を向けないが、一緒に選挙を支えた仲間と話し合う」と語った。共産党の志位和夫委員長も、この日の記者会見で「新潟で進んだ市民と野党の共闘は発展させたい。原発問題を中心に共闘の大義の旗をしっかり守る」と訴えた。
「原発ゼロ」を掲げる野党第1党の立憲民主党も野党共闘に前向きだ。福山哲郎幹事長は「多くの皆さんに応援してもらえる候補者で戦える知事選にしていきたい」と語った。ただ、党内に原発再稼働の賛成派を抱える民進党の増子輝彦幹事長は「野党統一候補が好ましいが、これからの話」との姿勢だ。(明楽麻子、別宮潤一)