日本総領事館前に日本統治時代の徴用工をイメージした像の設置することを目指し、路上に座り込む市民団体メンバー=1日、韓国・釜山、武田肇撮影
韓国の市民団体がメーデーの5月1日に、釜山の日本総領事館前に日本統治時代に朝鮮半島から労務動員された「徴用工」を象徴する像を設置しようとしている問題で、30日夜、市民団体が像の設置を強行しようとして警官隊に阻止された。市民団体は設置の構えを崩しておらず、1日午前9時現在も領事館近くの路上で警官隊とのにらみ合いが続いている。
市民団体は、韓国の全国民主労働組合総連盟(民主労総)の地元支部が主導。戦時中、日本国内の工場や炭坑などで働かされた徴用工の謝罪と賠償を日本政府に求める一環だとして、日本総領事館前に像の設置を予告していた。
これに対し、日本政府は、在外公館の安寧や威厳の維持を定めたウィーン条約に抵触するとして韓国政府に対応を求めていた。韓国外交省は「像は代替地に設置することが望ましい」とする康京和(カンギョンファ)外相名義の公文書を送ったほか、道路管理者の東区も設置許可を出さなかった。
警察関係者によると、市民団体は30日午後10時50分ごろ、奇襲的に像の設置を強行しようとし、一帯に配置されていた数百人の警官隊が阻んだ。市民団体は警察ともみ合いになり、「親日警察は帰れ」「日本は謝罪と賠償を果たせ」といった怒号をあげたり、警官隊にペットボトルの水をかけたりした。市民団体は1日午後に像の除幕式を行う考えで、警察は約3900人体制で対応する。
徴用工の賠償問題について日韓両政府は1965年の日韓請求権協定で解決されたとしている。釜山の日本総領事館前には2016年末、慰安婦問題を象徴する少女像が建てられ、日本政府は対抗措置として、大使らを一時帰国させた。市民団体は少女像の隣に「徴用工像」を建てると主張している。(釜山=武田肇)