マレーシアの首都クアラルンプールの裁判所は4月30日、警察への悪意のある偽ニュースを広めたとしてデンマーク国籍のスレイマン被告(46)に禁錮1週間、罰金1万リンギ(約28万円)の有罪判決を言い渡した。4月11日に施行されたフェイクニュース対策法が適用されたのは初めて。
地元メディアによると、イエメン出身の被告は4月21日、マレーシアを旅行中、パレスチナ人男性が射殺された事件の現場にいたとし、「繰り返し警察を呼んだが到着まで50分もかかった」と批判する動画を公開。これに対し警察は、被告が事件現場にいた事実はなく、通報から10分以内に到着したと反論していた。
スレイマン被告は裁判で偽ニュース拡散を認め、「対策法があるとは知らなかった。瞬間的な怒りにかられた行動で人を傷つけるつもりはなかった」と釈明した。
フェイクニュース対策法は「悪意を持って全部、または一部が事実に反するニュース、情報、データと報告書を出版、流布した人」を罰するなどと規定。偽ニュースの定義があいまいな点などが懸念されている。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのフィル・ロバートソン氏は「事実誤認があれば警察が否定すれば良いだけのことであり、表現の自由を侵害している。新法が廃止されない限り、今後も同様の人権侵害が起きるだろう」としている。(シンガポール=守真弓)