働き方改革関連法案の主な内容とポイント
安倍政権が「最重要」と位置づける働き方改革関連法案について、与党は23日にも衆院厚生労働委員会で採決に踏み切る。主要野党も加わり、本格審議が始まってまだ2週間ほど。働く人の多くに影響する法案は、論戦が深まらぬまま衆院を通ろうとしている。
「限られた時間のなかで一定の議論が尽きれば、採決をするのは当然だ」。自民党の萩生田光一幹事長代行は20日、NHKの討論番組で働き方改革関連法案などに関してこう述べ、野党の反対があっても採決に踏みきることを示唆した。
法案は、労働者側が求める規制強化と、経済界が求める規制緩和の抱き合わせ。内容の最大の対立点が高年収の一部専門職を労働時間規制から完全に外す、高度プロフェッショナル制度(高プロ)の導入だ。
規制から外れれば、企業は、働かせ過ぎを防ぐ仕組みである深夜・休日労働の割増賃金も払わなくてよくなる。政府は審議で、企業が「夜型」の人の労働時間を気にしなくてよくなり、自由に働いてもらえるなどの利点を挙げてきた。加藤勝信厚労相は18日の審議で、「多様な働き方の選択肢を提供し、専門職の方々に能力を発揮して頂く」などと説明した。
これに対して野党は、高プロは過労死を助長する懸念があるとして、法案からの削除を求める。これまでの審議で浮き彫りになったのが、働き過ぎを防ぐために企業に義務づける健康確保措置の実効性の低さだ。
企業には、高プロの適用者は年104日は休ませるなどの義務が課されるが、4週間で4日休めば残る24日は24時間働いても違法にならない。労働時間に代わって企業が把握する在社時間などの「健康管理時間」のうち、法定労働時間(週40時間)を上回る分が月100時間超になれば医師の面接指導を受けさせる義務もあるが、これで働き手の健康は守れないと野党は指摘。「過労死が増えるのは火を見るより明らかだ」(立憲民主党の長妻昭氏)と批判する。
一見、自由な動き方が認められそうな適用者に、企業が働く時間や場所を指示することが禁じられていないことも審議で問題視された。政府は野党の指摘を受けて初めて、省令で企業が指示できないようにする方針を表明。それでも「徹夜しないと終わらない仕事を与えられれば、働く時間の事実上の決定権は会社側にある」(国民民主党の大西健介氏)との声は絶えない。適用対象も、具体的には法成立後に「省令で定める」としているため、野党は「対象がずるずる広がるのでは」と批判する。
規制強化の柱となる、残業時間の罰則つき上限規制の議論も乏しい。繁忙月の上限「100時間」は、労災認定の目安とされる過労死ラインのため、過労死遺族から批判がある。立憲は「月80時間未満」とする対案を国会に提出したが、あまり議論されていない。年間上限は「720時間」とされたが、ここには休日労働は含まれていない。実際は休日労働を含めた上限である「2~6カ月平均が80時間」の12カ月分で、年960時間まで時間外労働をさせられる「抜け穴」をめぐる議論も積み残しのままだ。
与党は、日本維新の会が求めた高プロの同意撤回の手続きを整備する修正を週明けにも加えて批判をかわしたい考えだが、他の野党からは「途中で抜けられるのは当たり前で、規定されていなかったこと自体が法案の不備さ加減を表している。働き方は命や健康を守る問題だから拙速な議論を避けるべきだ」(立憲の福山哲郎幹事長)と議論不足を指摘する声が根強い。
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