第100回全国高校野球選手権記念東・西東京大会(朝日新聞社、東京都高校野球連盟主催)は22日、神宮球場で西大会の準々決勝2試合があった。春夏連続の甲子園出場を狙う日大三は、七回に代打満塁本塁打で逆転に成功し、片倉に競り勝って2年ぶりの4強入り。春季都大会準優勝の国士舘は序盤から主導権を握り、初のベスト4を目指した国分寺の反撃を振り切って5年ぶりに準決勝へ進出。西大会の都立勢は姿を消した。23日は、神宮球場で西大会の準々決勝の残り2試合が行われる。
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(高校野球 西東京大会 日大三8-6片倉)
ノーシードの片倉が挑んだのは、昨秋と今春の都大会覇者の日大三。犠打を駆使し得点機をものにして8強に進んできた片倉が、その日大三を一時は土俵際まで追い詰めた。
試合が大きく動いたのは日大三の七回の攻撃。2死満塁の場面で代打が告げられていた。片倉のエース紙田龍也(3年)と主将で捕手の石川颯汰(3年)は「初球は変化球で様子を見よう」と考えた。代打の小沢優翔(3年)に投じた初球はスライダー。その球が甘く入って、小沢に右翼席に運ばれてしまった。
石川は昨秋のことを思い出していた。日大三との練習試合で10点以上離され、完敗した。それまでの石川は主将として「失格だった」。我慢ができない性格で、好機に凡打に終わるとベンチでヘルメットを地面にたたきつけた。誰も話しかけず、寄ってもこない。
しかし、力負けしたこの試合から「自分もチームも変わらなければいけない」と誓った。口下手のため、自らの背中で訴えようと考えた。内外角を使い分けてのティー打撃など、考える練習を率先して進めていった。変化球が決まらなくても我慢して要求し、投手の良さを引き出す忍耐力が今や石川の特徴となっていた。チーム内でも「石川に任せている」と信頼してもらえるようになった。
4強をかけたこの日の試合も、左の横手から変則的に投げる紙田に対し「逃げるな。変化球で攻めるんだ」と強気でリードした。スライダーとチェンジアップをコーナーに集め、飛球や内野ゴロでうまく打ち取っていた。その変化球が、まさかの逆転劇につながってしまった。
打つ方でも、石川はチームトップの2打点の活躍。五回には左犠飛、六回には右前適時打を決め、主将としてチームを引っ張った。
試合後に「高校野球は楽しかった。すっきりしている」と話し、涙は見せなかった。「打倒・日大三という同じ思いを持つ学校が4強に残っている。甲子園という夢は、そこに託す」(木村浩之)