日本にすむアブラムシの一種の幼虫が身を犠牲にして外敵が開けた巣の穴を特殊な体液でふさぐ行動の仕組みを、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などの研究チームが明らかにした。15日、米科学アカデミー紀要に論文を発表した。
モンゼンイスアブラムシは公園などのイスノキに寄生し、「虫こぶ」と呼ばれる洋梨のような形の巣の中で植物の汁を吸って生きる。
ガの幼虫などの天敵が虫こぶに穴を開けて侵入してくると、アブラムシの幼虫が応戦しつつ、体の体積の半分以上を占める特殊な固まる体液を出し切って侵入路の穴をふさぐ。
研究チームはこの白い体液に着目し、含まれるたんぱく質を調べた。その結果、「フェノール酸化酵素」の働きで樹脂のように固まって穴をふさいでいると突きとめた。この体液が黒く固まり、人間のかさぶたのようになって、約1カ月で治るという。
幼虫は体液を出すと、脱皮できず成虫になれず、ミイラのようになって死ぬ。幼虫にとっては自爆行為に等しい。巣を修復する幼虫の行動について、沓掛磨也子主任研究員は「このアブラムシが、かさぶたを作るメカニズムを、自分の体の傷を治すのではなく、自分たちの巣の傷を治すという社会行動に転用している点がおもしろい」と話している。(松尾一郎)