186チームが参加した神奈川大会は、残すところ準決勝、決勝の計6試合となり、これまでに178チームが姿を消した。引退する3年生、部を引き継ぐ後輩たちに、敗れた監督たちはどんな言葉を送ったのか。試合後の一言に耳を傾けた。
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1回戦、浅野に2―3で惜敗した麻布大付の小林慎治監督は選手たちを前に。
――勝たせてあげられなくて申し訳ない。おまえらは良くやったよ。胸張ろうよ。試合は打てるとか、守れるとかじゃない。やれたか、やれなかったかなんだよ。自分に「やれたか?」って聞いてやりきったなら胸を張れ。やりきってないなら、後悔があるなら、次の舞台でやれ。そのためにも今は胸を張ろうよ。
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3回戦、横浜スタジアムで上溝南に4―5で敗れた川崎工科の大平康幸監督は保護者と選手を前に。
――3年生は8人と少ないなかここまで戦ってきました。横浜スタジアムでの試合に選手たちは最初緊張していましたが、最後になるにつれてやってきたことが出せた。選手たちには非常に厳しい言葉もかけた。この中に泣いたことがない選手は1人もいないんじゃないか。この2年半、逃げたいと思いながらも逃げずに続けてきたことを胸に、これからの学校生活も頑張って下さい。
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1回戦、慶応藤沢に敗れた永谷・大井の高橋直也監督が選手たちを前に。
――苦しい試合だった。自分たちの思うようにならず、課題としていた連係などで細かいミスが出て、相手の流れになっていった。本当はここでほめたいが、もっとできると思う。個人個人にはいろんな可能性がある。そこを出し切れなかった。弱い自分が出てしまったのが残念だろう。そこをどうコントロールできるか。野球も野球以外でも、今後の人生で苦しい時に、戦っていける人間になっていけるか。この試合を教訓にしてくれるといい。
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2回戦、藤嶺藤沢に4安打、14三振に抑えられ、0―3で敗れた逗葉の高野浩監督。試合後、涙ぐみながら語りかけた。
――お前たちは自分たちでしっかり戦ってくれた。本当にすばらしい野球だったと思います。ただやっぱり、負けたから、もっと練習をやらなきゃいけなかった。3年生はこれからの人生、もっと頑張らなきゃいけないこと、たくさんあると思う。
試合に出られたやつ、いいか。試合に出られずに終わった3年生もいるんだ。みんなで作ったチームだということを、絶対忘れないように。さあ、逗葉高校の野球部として、片付けもきれいにやろう。
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選手9人で戦った夏が3回戦で終わり、川崎総合科学の遠藤順久(よりひさ)監督は球場の控室で選手たちに語りかけた。
――ナイスゲーム。3年生、お疲れさまでした。少ない人数でやってきたが、3年生の成長がこのチームを作った。だから1年生を迎え入れることができた。本当にありがとう。人数は少なかったけれど、こんなに楽しかった夏はない。もう一歩だったけれど、いっぱいチャンスを作ったじゃん。自分を信じてほしい。堂々と前を向いていいじゃんか。1、2年生はこの試合の悔しさを絶対に忘れるな。みんな堂々と胸を張ろう。
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1回戦、神奈川大会初のタイブレークで横浜桜陽に6―7で敗れた金沢総合の黒滝敏明監督は選手たちに語った。
――何事も、うまくいくときと、うまくいかないときがある。それが人生というもの。タイブレークで敗れはしたが、大切なのはその結果ではなく、そこに至る過程だ。よく最後まで諦めずに粘り強く戦ってくれた。いまはみんなに感謝の言葉しかない。
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3回戦、3―5で橘に敗れた川崎北。今年定年を迎える西野幸雄監督が、球場の外で選手を前に。
――泣いていい試合じゃないよ。お前らはもっとできたのに、やりきれずにここで負けてしまったんだ。この先の野球や受験勉強、なんでもいいから、全力を尽くして。世の中はもっと厳しいぞ。できないことをやるんじゃなく、できることをやり切れる人間になってくれ。
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12年ぶりに2勝を挙げて臨んだ3回戦だったが、藤嶺藤沢に0―7で敗れた大磯の窪田祐樹監督は球場の控室で選手に語った。
――みんなここまでよく戦ってくれて本当にうれしい。このチームの監督でよかったと思う。公立校で二つ勝ってくれた。快挙だ。大磯の歴史を作った。格好いいよ。いい夏を過ごせたと思う。最高の宝物だよ。人生はこれから。これまで培ったものは一生色あせない。ここから先、何があっても頑張れる。みんな一生の友達になる。この仲間を大事にして生きてほしい。
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降雨ノーゲームの翌日の再試合で十一回表に1点を勝ち越し、その裏に逆転サヨナラで多摩に敗れた上溝の平林明徳監督。更衣室前の通路に3年生の選手5人とマネジャーを呼んで手を握り、共に泣いた。
――苦しいことがいっぱいあったと思う。17回だよ、昨日から。よく戦った。しっかりやってくれた。うれしかった。このゲームは監督の責任。いろんな作戦をとれたけど、勝たせられなくてごめん。みんなは最後まで隙はなかったと思う。お前たちと一緒に校歌をうたいたかった。(次戦の)保土ケ谷に行かしてやれなかった。それがほんとに悔しい。濃い1年だった。色々、きついこと言ったけど、すべては夏に勝つため。部員9人からスタートしてここまで成長してくれた。ありがとう。