北朝鮮は朝鮮戦争(1950~53年)休戦65周年にあたる27日、戦争で行方不明になった米兵の遺骨55柱を米国に返還した。ただ、体制保証につながる終戦宣言に米国が応じないかぎり、新たな非核化措置には応じない方針とみられる。今後は、残る遺骨を交渉カードにしながら米朝交渉に臨む可能性が高そうだ。
北朝鮮が米兵遺骨返還 戦争当時に行方不明の55柱前後
北朝鮮が米兵の遺骨を返還したのは、2007年4月以来11年ぶり。米空軍機で輸送された遺骨は27日昼、在韓米軍の烏山基地に到着した。8月1日夕に基地で式典を行った後、ハワイにある米国防総省捕虜・行方不明者調査局に移送する。米政府関係者によると、DNA鑑定などで遺骨の身元の特定作業に入る。
トランプ米大統領は27日午前、米ホワイトハウスで演説し、「金正恩(キムジョンウン)委員長に対し、私との約束を果たしてくれたことに感謝申し上げたい」と述べた。米ホワイトハウスも26日夜、声明を出し、「金委員長はトランプ大統領との約束の一部を果たした。我々は北朝鮮の行動と前向きな変化の勢いに勇気づけられた」と称賛した。
米朝関係筋によれば、北朝鮮はこれまでの遺骨返還協議で、発掘作業の費用を払うよう米側に求めた。米国は今回は払わない方針だが、今後、米朝による共同発掘調査の際に費用を払う考えを伝えたという。
北朝鮮メディアはこの日、国内であった朝鮮戦争の関連行事について、「祖国解放戦争勝利65周年」と大々的に報じた。米国を名指しでは批判しなかったが、非核化をめぐる新たな措置への言及もなかった。
北朝鮮は、今月に入ってミサイル実験場の解体に踏み切ったとみられる。北朝鮮外務省報道官の談話によれば、これまでの米朝交渉では、北朝鮮によるミサイル実験場の解体と今回の遺骨返還に合わせて、米国が朝鮮戦争の終戦宣言に応じる問題が提起されているという。このため北朝鮮は今後、残る遺骨約150柱の返還も交渉材料に使いながら、米国に宣言を出すよう求めるものとみられる。(ソウル=牧野愛博、ワシントン=園田耕司)