(27日、高校野球北大阪大会 大阪桐蔭6―4履正社)
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「ライバル」とはここまで互いを高め合う存在なのか。北大阪大会の準決勝。「今年は弱い」と言われ続けた履正社が、大阪桐蔭を9回2死まで追い詰めた。
9回2死劣勢での冷静 大阪桐蔭「最後までわからない」
「いちかばちかの大ばくち」と岡田龍生監督が振り返ったのが先発投手起用。マウンドに上がったのは、高校に入って公式戦初先発、主将の浜内太陽(3年)だった。
「力の差がある。何かをしなければ、勝てる相手ではない」と岡田監督。実は、浜内は中学時代、大阪桐蔭からも声がかかるほどの投手だった。入学後は肩を痛めていた時期もあり、野手に専念していたが、1カ月ほど前から投球練習をしていた。「序盤から100%(の力)で」と六回まで無失点の好投で起用に応えた。
浜内もチームも、もがき続けた1年だった。一昨年、昨年と互角に渡り合っていた大阪桐蔭は今春の選抜で連覇を果たした。一方の履正社は春季府大会で4回戦敗退。その後の練習試合でも負け続けた。
それでも、浜内は大会前に言った。「甲子園への思いは誰にも負けない」と。選手だけのミーティングを重ね、仲間に「泥臭さ」「勝利への執念」の必要性を説いた。岡田監督がかけたのは、そんな主将の「人間力」だった。
力投に打線が応える。3点を先制された直後の七回に1点を返すと、八回は筒井太成(3年)、西山虎太郎(3年)の連打、松原任耶の左中間適時三塁打などで逆転。九回の守りも2死までこぎつけ、勝利は手の届くところまで来ていた。
だが、この土壇場で浜内はライバルの底力を味わうことになる。
大阪桐蔭の主力打者が、必死にくらいついてくる。際どい球はファウルにされ、ボール球は振ってもらえない。「打ち損じてくれないし、気迫も感じた」。2番宮崎仁斗(3年)から4連続四球で押し出し。続く山田健太(3年)に勝ち越しの左前適時打を浴びた。
大阪桐蔭は履正社が隠していた「投手・浜内」も想定内だった。25日の履正社の準々決勝。視察に訪れていたスタッフがブルペンで投球練習する浜内の姿を見逃さず、「先発もありうる」と頭に入れていたのだという。
「少し慎重になりすぎて序盤は打てなかったけど、焦りはありませんでした」とは九回2死から四球を選んだ宮崎。あの場面、何を考えていたのかという問いに、「浜内投手はクイックが遅いので、塁に出て盗塁をすれば、3、4番で同点にできると思っていました」と冷静に振り返った。
大会前、大阪桐蔭の西谷浩一監督や選手の誰に聞いても、「そりゃ、ここまで結果が出ていなくても、履正社が弱いなんてことは絶対にない。選手もそろっているし、最後にはきますよ」という答えが返ってきた。
言葉通り、見事な意地を見せた履正社と、それを瀬戸際でひっくり返した大阪桐蔭。大阪の「2強」によるライバル対決は、今年もアツかった。(山口史朗)