ラオス南東部アッタプー県で韓国企業が参加して建設中の水力発電用ダムが決壊し、多数の被災者が出たことを受け、韓国政府は29日、医療スタッフら20人で構成する国際緊急援助隊を軍用機2機で派遣した。前日の28日には毛布や衛生用品など50万ドル(約5500万円)相当の救援物資を「第1次輸送」として現地に届けており、手厚い対応を続けている。
韓国政府によると、国際緊急援助隊の単独派遣は2014年にエボラ出血熱の対応支援で西アフリカのシエラレオネに派遣して以来2例目。対応の背景には「原因はともかく、ダム建設に参加している国として救護に積極的に乗り出すべきだ」とする文在寅(ムンジェイン)大統領の指示がある。
文政権は昨年、米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD〈サード〉)の韓国配備をめぐって中国側から「経済報復」を受けた経験から中国依存を減らす「新南方政策」を進める。東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済関係を強化するのが狙いだ。今回の決壊で韓国企業の事業に批判が高まれば、打撃になりかねないとの警戒感がある。
ダム建設は、韓国企業がラオスに投資する最初の発電事業として事業費の51%を政府系の韓国西部発電と財閥系のSK建設とで出資、韓国がASEANでの存在感を示す看板事業になるはずだった。韓国西部発電の社長は25日に韓国国会で行った報告で、記録的豪雨による自然災害との側面を強調し、決壊直前には、州政府と連携して周辺住民の避難に着手していたと説明した。(ソウル=武田肇)