西日本各地を襲った豪雨被害からもうすぐ1カ月。岡山県倉敷市真備町では、小田川や支流の複数箇所で堤防が決壊。町に流れ込んだ泥水は、人々が暮らす住宅だけでなく農地や漁場も押し流した。農産物などへの被害は大きく、復旧のめどすら立たない状態だ。
小田川支流の堤防脇に広がる田園地帯。「どこから手をつけたらいいのか」。例年なら鮮やかな緑の稲が揺れているはずの水田で、代々続く稲作農家の須増国生(すますくにお)さん(57)はつぶやいた。辺りには農機や家財道具、屋根瓦などが散乱し、干からびた泥で覆われた土壌からは油の臭いが立ちこめる。
元の状態に戻すには、水田を覆う大量の土砂やゴミを取り除くほか、土壌に流れ込んだ農薬や油などの物質が残留していないか、調査する必要があるかもしれない。須増さんの水田は全部で約8千平方メートルもあり、来年再開できるのか、見通しは全く立たない。
農林水産省が発表した、豪雨災害による農林水産業に関する被害額は、7月30日時点で約2100億円。だが、被害の大きい岡山・愛媛などでは被害の全容がいまだ把握されておらず、被害額はさらに拡大する見通しだ。(小林一茂)