西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山県倉敷市真備(まび)町では、中学校2校が浸水し、休校のまま夏休みを迎えた。避難生活を送る3年生は、高校受験を前に不安を抱えつつも、「こんなときだからこそ頑張りたい」と勉強に励む。
被災地のために今できること…西日本豪雨支援通信
西日本豪雨、列島各地の被害状況は
200人以上が避難生活を送る倉敷市真備町の二万(にま)小学校体育館。消灯時間が迫る午後10時、多くの人が横たわる段ボールベッドの脇に並んだ机で、高校受験を控えた真備中学3年の川相愛佳(まなか)さん(15)が数学の問題集を広げた。隣に座るのは、大学2年の岡野祐汰さん(19)。2人とも自宅が2階まで浸水した。
川相さんは避難指示が出た6日夜から、家族と二万小に身を寄せる。「ここまで被害が大きくなると思わなかったから、教科書も制服も持ってこなかった」。真備中は2階まで浸水して休校となり、終業式もないまま夏休みに入った。
教員から夏休みの宿題や教科書は受け取ったが、「習っていないところを自分で勉強しないといけない。受験があるのに授業が追いつくのかな」という。
そんなとき、川相さんは学習塾でアルバイト講師をしている岡野さんを避難所で見かけた。「勉強を教えて」。岡野さんは「受験生だし、力になってあげたい」と快く応じた。こうして始まった受験勉強は毎晩、岡野さんがアルバイトから戻る午後10時から1時間ほど。消灯後は、小さな明かりが照らすステージを机代わりにして立ったまま勉強する。川相さんは「同級生にも会えず大変なときだけど、志望校に合格できるよう頑張りたい」。
自宅が被災した中高生が勉強できるよう、岡山県教委は真備町に近い総社市の総社南高校の教室を開放。真備東中学3年の森本美心(みこと)さん(14)と同級生の稲田愛子さん(14)は「避難所では落ち着いて勉強できない」と口をそろえる。午前中は総社南高で勉強し、午後は自宅に戻り、片付けを手伝う日々。森本さんは2学期から、志望する高校近くの中学へ転校することが決まった。「仕方ないけど、一緒に卒業したかった」。稲田さんと勉強できる時間を大切にしている。
倉敷市教委によると、校舎が被災した真備中と真備東中の3年生は計約200人。転校を検討している生徒も複数いるという。両校は9月3日に始業式を開く予定だが、復旧の見通しが立っておらず、当面は市内の小学校や大学の空き教室を活用する方針だ。
また避難所となった市内16カ所の小・中学校では学習室を開設。快適な環境で自習できるよう、エアコンのついた教室や図書室で学習スペースを確保するよう通知した。特に受験生に配慮し、夜間に学習できる場の開設も検討している。
真備中と真備東中では、教員が総出で校舎の片付けに追われている。真備中の教諭、黒明(くろみょう)堅一郎さん(38)はこう言う。「2学期にはみんな元気な顔を見せてほしい。先が見えず、進路の不安もあると思うが、卒業式ではできるだけ全員で送り出してやりたい」(小若理恵、大賀有紀子)