あなたは結婚後、名字が変わりましたか。東京五輪・パラリンピックの誘致活動で感動的なスピーチをした、パラリンピアンの佐藤真海さんは、結婚して公私ともに谷真海さんになりました。選手としては「佐藤」の名を使い続けることも可能でしたが、「谷」に統一したのにはある理由がありました。
現状では、名字を変えるのは96%が女性ですが、男性が変えるケースも。妻の名字に変えたことで仕事上のさまざまな不便を経験したサイボウズ社長の青野慶久さんは、夫婦別姓が選べないのは憲法違反だと、国を訴えました。すると、予想以上の反響があったといいます。
やはり自ら名字を変えたブロガーのヨスこと矢野洋介さんは、「夫婦別姓」という言葉は「生意気」で「ネガティブ」な印象を与えるからと、ある別の言葉を提案します。
名字は、「たかが呼び名」以上の重いもの。あなたは自分の名字を変えたいですか?(聞き手・三輪さち子、山口栄二、高重治香)
同じ姓で一緒に闘う「チーム」に パラリンピアン・谷真海さん
私の場合、結婚後も旧姓の「佐藤」真海のままアスリートとして活動するという選択肢もありました。佐藤としてキャリアを積んできましたし、2013年の東京五輪・パラリンピックの招致スピーチをきっかけに取材が増え、広く知られるようになった名前でもありましたから。
でも14年に結婚し「谷」に。15年に長男を出産し、16年の復帰のタイミングで、競技名も「谷」に変えました。
何を優先したかといえば、20年の東京大会です。このとき息子は5歳。ユニホームには「TANI」と入ります。佐藤真海として大会に出るより、谷真海として出たい。同じ姓の方が、家族一緒にチームで闘っているという気持ちを持てる。それが姓を変えた大きな理由でした。
実績のあるスポーツ選手は、姓を変えない選手の方が多いです。講演活動など、競技以外のビジネスチャンスを考えれば、変えないほうが無難だとは思います。
でも私の場合、企業に所属しているので、フリーの選手のように、スポンサーに配慮する必要もあまりありません。信頼している上司にも相談しましたが、「佐藤として知られているからということより、自分がどうしたいかを優先すればいいよ」と背中を押されました。出産後、走り幅跳びからトライアスロンに転向したことも、姓を変えやすいタイミングでした。
夫が私の姓に合わせるという選択肢は思い浮かびませんでした。友達や親戚などで、夫以外の姓を名乗るケースはなく、話題にしたこともほとんどありません。制度や法律というと、どうしてもそれ以上は踏み込みにくい感じがするからでしょうか。
ただ、結婚後も自分の姓を使い続けたいという人がいるのであれば、同姓か別姓かを選べるようにするのは良いことだと思います。それでも、我が家は同じ選択をしただろうと思います。家族みんなが同じ姓で、ということに決意を込めましたから。「支えてもらう」とか「支えてあげる」でもない。みんな同じ気持ちで東京大会に向けて闘っている、まさにチームです。
こうして家族全員一丸となって闘ってきただけに、東京大会で私が出場予定だった種目を実施種目から外すという国際パラリンピック委員会の決定を聞き、とてもショックを受けました。戦わずして門戸を閉ざされてしまうなんて、残念でなりません。でも除外されたクラスの選手の救済措置が取られるかもしれない。最後の望みに賭けて、残りの試合も全力で戦います。
結婚しても出産しても、自分の…