パリのセーヌ川で水質改善計画が進行中だ。1923年に市民の遊泳が禁止されてから、ほぼ1世紀。過去にも汚名をすすごうとしたことがあるが、挫折を味わった。2024年のパリ五輪の競泳会場に決まったことで、今度ばかりは後に引けないようだ。(パリ=疋田多揚)
数々の名画やシャンソンの舞台になり、河岸がユネスコの世界文化遺産に登録されているセーヌ川。パリ市民や外国人観光客にとって憩いの場だ。
ところが、河岸に下りてみると、水は緑色に濁っている。木くずやペットボトル、見分けのつかないゴミが水面を漂い、果ては自転車まで投げ捨てられている。
7月下旬、河岸で日光浴をしていたモード・メスニーさん(40)に話を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「いくら暑かろうと、今のセーヌ川で泳ごうとは思いませんよ。病気になるに決まっています」
国の環境連帯移行省で、水質検査を担当するジュリ・ペルスレさんによると、全長約780キロのセーヌ川で一番汚れているのが、パリ付近だという。
最大の原因は、汚水の垂れ流しだ。30万ほどある配管の約1割で、下水管が雨水管につながり、汚水がそのまま川に流れ込んでしまっている。ペルスレさんは「戦後直後に建てられた家に多い工事ミス」という。
さらに一部の配管では、悪天候…